おやぢの部屋2
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KARG-ELERT/Complete Works for Flute
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Thies Roorda(Fl)
Nata Tsvereli(Pf)
NAXOS/8.573269-70




1877年生まれ、ライプツィヒ音楽院でカール・ライネッケに学び、1919年にはマックス・レーガーの後任として同音楽院の作曲と音楽理論の教授に就任、終生その職にあったというジークフリート・カルク=エラート(カーク=エラート)というエリート作曲家の名前は、おそらくフルート関係者の間でのみ知られているのではないか、という気がするのですが、どうでしょう?一応彼はオルガンやハルモニウムのための作品が有名だ、とされていますし、合唱曲のCDも出ていますが、なんと言っても当時のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席フルーティストであったカール・バルトゥツァットに触発されて作った多くのフルートのための作品の方が、間違いなく「実用に供している」のではないかと思うのですがね。
その中で、もっとも頻繁に、たとえば音大の卒業演奏会などでは定番となって演奏されているのが、「ソナタ・アパッショナータ」というフルート・ソロのための作品です。ほんの5分足らずの作品ですが、ちょっと無調っぽいテイストの中に見え隠れするロマンティシズムは、単なる「教材」を超えた魅力を持っています。
実は、これを吹いてみたくて、楽譜を入手してみたのですが、いざ自分で演奏しようとすると、その独特の音列にたじろいでしまい、なかなかものにすることができませんでした。そんな時に、同じ作曲家のフルートのためのエチュードがあるというので買ってみたのが、この「30のエチュード」という国内版の楽譜です。

今回、NAXOSから世界で初めてという、カルク=エラートの全フルート作品を集めた2枚組のCDが出ました。実は、彼は全部で24曲ものフルートのための作品を残しているそうですが、印刷されたもの以外は全て失われてしまっているのだそうです。つまり、出版されて命拾いした作品の全てが、このCDに収められているということになるのでしょう。
もちろん、「アパッショナータ」はしっかり入っていましたが、その中に「30のカプリース」という作品があるのに注目です。もしやと思って各曲のタイトルを見てみると、それはさっきの「エチュード」と全く同じではありませんか。実は、この作品には「ソロ・フルートのための新しいテクニックのグラドゥス・アド・パルナッスム」というサブタイトルが付いていました。「グラドゥス」なんたらというのは、「教則本」の代名詞(クレメンティの同名楽譜を揶揄している、ドビュッシーの「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」という曲がありましたね)ですから、これはまさに「エチュード」そのものだったのですね。
そこで、いまだに全曲は自分の楽器から音になって出ていないこの「カプリース」を聴いてみると、ここにはとても幅広い音楽のエキスがちりばめられていることが分かります。かろうじて仕上げた「1番」は、思った通りバッハの無伴奏パルティータそのものですし、「ヘンデル風に」というタイトルの「3番」も、ちょっと?は付きますが、ヘンデルと思えなくもありません。そこから全音音階は出てくるわ、12音に近いものは出てくるわ、最後を締めくくる「30番」は長大な「シャコンヌ」になってるわで、もうお腹いっぱいです。おそらくこの「エチュード」、いや「カプリース」を全部仕上げたら、「アパッショナータ」だけではなく、どんな曲でも吹けるようになるに違いありません。
それにしても、このアルバムから見えてくるカルク=エラートの作風のヴァラエティには驚かされます。基本、ドイツの後期ロマン派を継承するものなのですが、「点描派風組曲」という作品では、ゴーベールやフランク、そしてドビュッシーの影がはっきりと見られます。
演奏しているロールダは、良く響く低音と、確実なテクニックには感服するものの、何か音が重苦しく、特にピアノ伴奏が入った時のピッチが低めなのが、アルバム全部を聴きとおした時には辛く感じられてしまいます。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2014-07-07 20:45 | フルート | Comments(0)