おやぢの部屋2
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AHO/Theremin Concerto ・ Horn Concerto
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Carolina Eyck(The)
Annu Salminen(Hr)
John Storgårds
Lapland Chamber Orchestra
BIS/SACD 2036(hybrid SACD)




まるでヒンデミットのように、多くの楽器のために協奏曲を書き続けてきたフィンランドの現代作曲家、カレヴィ・アホのプロジェクトは2011年にその18番目の成果である「ホルン協奏曲」が完成したことによりめでたく終了しました。
この曲の最もユニークな点は、ソリストが前に立って演奏するのではなく、下手の舞台裏からステージ上のオーケストラの後ろを演奏しながら通って行き、上手の舞台裏に隠れてしまう、というパフォーマンスを行うことです。
これはあたかもホルンの「旅」のよう、そんな旅の終わり近くには、まるでベートーヴェンの「7番」のような「タンタタン」という執拗なスケルツォのリズムに乗って、お祭りが始まります。そんな楽しいひと時も、やがて「別れ」が訪れ、ホルンの姿が消えたステージではオーケストラが、まるで彼女を懐かしむかのような音楽を演奏します。
そして、カップリングは、「普通のオーケストラ」にはまず登場しない楽器「テルミン」を独奏楽器にした協奏曲「8つの季節」です。テルミンは20世紀初頭に作られた世界初の電子楽器ですが、クラシックの作曲家が使うことはまずありませんでした。ですから、よもやこの楽器のために協奏曲を作った人など、このアホの前にはいなかっただろうと思ったのですが、調べてみたら1945年の2月に、アニス・フレイハーンという人の「協奏曲」が、世界初の「テルミニスト」クララ・ロックモアのソロ、ストコフスキー指揮のニューヨーク・フィルの演奏によって初演されていました。それはこちらで聴くことが出来ます。まあ、ヴァイオリン協奏曲を代わりにテルミンで演奏した、といった感じの曲で、当時のこの楽器に対する可能性の限界がうかがえます。
つまり、今回のアホの「テルミン協奏曲」では、それとは全く次元の違う使われ方がされているのです。それには、「最新の」テクニックを身に着けたプレーヤーの存在が必要になってきます。それを見つけたのは、こちらでアホの「コントラファゴット協奏曲」を演奏していたナショナル交響楽団のコントラファゴット奏者のルイス・リプニック。2010年に彼のオーケストラがロシア出身の作曲家レーラ・アウエルバッハの「交響曲第1番」(初演は2006年、デュッセルドルフ)を演奏した時に、「アド・リブ」で加えられていたテルミンを演奏していたカロリナ・アイクに衝撃を受け、さっきのCDを渡して、「この作曲家に、あんたの楽器のための協奏曲を作ってもらいなよ」と言ったのだそうです。そこで彼女はアホとコンタクトを取り、アホも作曲を開始、楽器の可能性などをディスカッションするうちに、彼女が歌いながら楽器を弾くことも出来ることも分かり、それもこの作品に生かされることになりました。
作品には、フィンランドの秋から冬の終わりにかけての8つの「季節」を表すタイトルが付けられています。1曲目の「収穫期」では最初にテルミンが演奏を始めた時、それはまるでオーケストラに最初からある楽器、例えばチェロのように聴こえてきました。音の立ち上がりやビブラートの付け方が、今まで聴いていたテルミンとは全く違っていたのです。実は、カロリナは先ほどのロックモアが使っていた「RCAテルミン」とは、文字通り「別の楽器」を、使っていたのでした。それは、故ロバート・モーグが晩年に完成させた「イーサーウェイブ・プロ」という楽器、さらに、より滑らかな歌い方が出来るようなモジュールを加えてカスタマイズされたモデルです。

ある時などは、この楽器はまるでオンド・マルトノのように聴こえてきます。確かに、オンド・マルトノの出発点はテルミンだったのでした。こうなると、いずれはメシアンの作品でもオンド・マルトノのパートを、やすやすとテルミンで演奏
もちろん、SACDはそんなテルミンの未来形までも予想できるほどのすごい音を伝えてくれています。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2014-08-30 21:06 | 現代音楽 | Comments(0)