おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Mussorgskij-Ravel/Tableaux d'une exposition
c0039487_2120257.jpg








BREITKOPF/5532(Full Score)



ラヴェルが編曲したムソルグスキーの「展覧会の絵」は、今のオーケストラの現場ではほぼ例外なくBoosey & Hawkesから出版された楽譜を使って演奏されているはずです。正確には、「B&Hから出版された何種類かの楽譜、および、そこから派生した楽譜(海賊版とも言う)」ということになるのでしょう。もちろん、これ(ら)にはきちんとパート譜も用意されていますから、演奏に使うためには申し分ありません。何しろ、この楽譜は、1929年に「ロシア音楽出版」から最初に出版されたものを、そのまま版権を譲り受けたという、とても由緒正しいものなのですからね。しかし、このB&H版は、1942年に出版されて以来、1953年と2002年とに改訂を行っていますが、いまだに多くの疑問点やミスプリントが残った、ちょっと信頼のおけない楽譜のままでいます。というか、2002年の「新改訂版」と呼ばれるものは、版下は1953年版をそのまま使い、それにほんの少し手を加え、いくつかの注釈を書き加えただけ、というしょぼいものですからね。
そんな中、1994年にEulenburgから、ラヴェルの自筆稿などの資料を精査してきちんと校訂された楽譜が出版されました。2004年には日本版も出版されています。これは、今までB&H版では謎とされていた部分が、ことごとく解決されていた、素晴らしいエディションでした。ただ、これはパート譜などは用意されていませんでしたから、部分的に指揮者や演奏者が楽譜に書き込んで直すための、いわば「研究用」の資料としての価値が一義的なものだったのでしょう。
そこに、つい最近、Breitkopf & Härtel社(これもB&Hなので、「ブライトコプフ」と言うことにします)という「大手」が、参入しました。この出版社でラヴェルの新しい楽譜の校訂を行ってきた、指揮者であり音楽学者でもあるジャン=フランソワ・モナールの校訂による、やはりEulenburgと同じ手法で作られた「原典版」です。こちらは、レンタルになりますがちゃんとパート譜も用意されていて、実際にオーケストラのライブラリーとしての需要を見込んで出版されたものです。
その作られ方からも分かる通り、このブライトコプフ版は、B&H版に比べたら、限りなく編曲者であるラヴェルの意思に近いものとなっています。つまり、あくまでラヴェルの自筆稿に忠実な校訂を行い、仮にそこがムソルグスキーの楽譜とは異なっていても、ラヴェルが書いたものを優先させるという姿勢が貫かれているのです。そんな例が、最初のプロムナードの23小節目(「5番」の2小節目)の3番ホルンと3番トランペットの最初の音です。ムソルグスキーではこの音はEフラットですが、ラヴェルの自筆稿ではEナチュラルなので、ここでもEナチュラルになちゅらっています。B&H版ではEフラットでした。

もう一つ、「サムエル・ゴルデンベルク」の19小節目(「60番」の2小節目)のトランペットの16番目の音も、ラヴェルはダブルシャープ、ムソルグスキーはただのシャープですが、こちらはダブルシャープ、B&Hはシャープです。そのあとの同じ形も、同様ですね。


この2点は、もちろんEulenburgも全く同じ扱いなのですが、中にはブライトコプフ版独自の解釈が現れているところもあります。「バーバ・ヤガー」の125小節(「94番」)からの10小節間は、今までのどの楽譜でもチューバとティンパニが交代で、あるいは同時に「ブンブン」あるいは「ドンドン」とやっていたのですが、この楽譜ではティンパニの「ドンドン」だけになっています。
こんな有名な曲ですから、いずれこの楽譜を使って「ブライトコプフ版による世界初録音」みたいな帯コピーのついたCDが発売されることでしょうね。
この楽譜、知ったのは日本の楽譜屋さんの案内ですが、そこでは本体価格12,580円でした。でも、直にブライトコプフのサイトから買ったら、59.9ユーロ、今の為替相場だと8,000円ちょっとです。送料を入れても9,500円、日本で買えば税込13,586円+送料ですから、かなりのお買い得でした。注文して1週間で届きましたし。

Score Artwork © Breitkopf & Härtel
[PR]
by jurassic_oyaji | 2014-09-03 21:22 | 書籍 | Comments(0)