おやぢの部屋2
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ニューフィルとボストン響
 昨日の「おやぢ」で取り上げた「展覧会の絵」のスコアは、なかなか興味深いもので、現行のブージー版とはかなり異なっている部分があるのは、書いてある通りです。ただ、非常にややこしい話なのですが、あそこに譜例を挙げて違いを指摘した部分は、共にブージー版の「旧版」、つまり、1942年のポケットスコアでは今回のブライトコプフ番と同じ形になっているのですね。それが1953年の改訂で「訂正」されたものが、現行の楽譜として広く使われているのです。ですから、「現場」ではすでに長年にわたってどちらを選ぶか、という選択肢が提示されていたことになります。
 そんな「現場」の最近のものに、ついこの間行われた仙台ニューフィルのライブ録音があります。それを聴いてみると、「プロムナード」では「Eフラット」(→音源)、「サムエル」では「ダブルシャープ」(→音源)になっていました。つまり、片方は「ムソルグスキー」、もう片方は「ラヴェル」の楽譜に従っているという、折衷的な形ですね。おそらく、これがCDなどを聴く限り現在では最も一般的なやり方なのではないでしょうか。
 その、「サムエル」での「ダブルシャープ」から、オリジナルに忠実な「シャープ」に直したのは、この編曲を委嘱したクーセヴィツキ―でした。ブージー版の「新版」に掲載されている写真で、それがはっきり分かります。
ニューフィルとボストン響_c0039487_17331550.jpg
 そのクーセヴィツキー自身が、ボストン交響楽団と1930年に録音した「世界初録音」の音源、こちらで聴くことが出来ます。当然、「サムエル」は「シャープ」になっていますね。それはこちらで聴けます(→音源)。ところが、「プロムナード」では、こちら(→音源)のように、ラヴェルが直した形で演奏しているのですから、なんか不徹底。というか、あくまでムソルグスキー(もちろん、原典版のピアノ譜)に忠実にということだと、そのほかにも直す必要のあるところは山のようにあるのですけれどね。
 ただ、そのような違いを、単に使っている楽譜の違いということで片付けるのは、かなり危険です。指揮者や、場合によってはオーケストラのメンバーが、故意に楽譜を変えて演奏しているということが、この曲の場合はあるみたいですからね。仙台ニューフィルが最初にこの曲を演奏した時には、指揮者の末廣さんの指示で、ラヴェルが付け加えた小節を全てカットしてましたからね。今にして思うと、あれはいったい何だったのか、という気がします。
by jurassic_oyaji | 2014-09-04 20:22 | 禁断 | Comments(0)