おやぢの部屋2
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LOUSSIER/Violin Concertos
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Adam Kostecki(Vn)
Piotr Iwicki(Perc)
Gunther Hauer(Pf)
Polish Philharmonic Chamber Orchestra
NAXOS/8.573200




ジャック・ルーシエと言えば、1959年に発表した「プレイ・バッハ」というアルバムで、おそらく世界で初めてジャズの世界にバッハを持ちこんだフランスのピアニストというイメージが定着していますが、そんな彼が作った「ヴァイオリン協奏曲」などというものがあるのだそうです。しかも2曲も。でも、そもそも彼はクラシックのピアニストを目指してパリのコンセルヴァトワールに入学、イヴ・ナットの教えを受けているということですので、もちろんベースにはしっかりとしたクラシックの素養があるのでしょう。それにしても、ピアノではなくヴァイオリンのための協奏曲とは。
この「ルーシエ」さんは、もうすっかり「ルーシェ」という表記(違い、分かります?「エ」は大文字です)に馴染んでしまっていますが、ご本人が「ルーシエ」と発音しているのですからなんとかしてあげたいな、と、常々思っています。同じ綴りで菓子職人を意味する「pâtissier」はきちんと「パティシエ」と発音できるような時代になったのですから、そろそろ「ルーシェ」はやめにしませんか?もし今「パテシェ」という人がいたら、かなりダサいでしょ?
「協奏曲第1番」は1987年から1988年にかけて作られています。正式には「ヴァイオリンと打楽器のための協奏曲」というタイトルが付けられている通り、ソロ・ヴァイオリンの他に「打楽器」がフィーチャーされています。しかし、その実体は殆どルーシエの普段の音楽活動ではおなじみの「ドラムセット」です。4つの楽章から出来ているこの曲の中の、第1楽章と第4楽章に、この「ドラムス」が登場します。つまり、そういうサウンドですから、これは限りなくポップ・ミュージックに近い仕上がりとなっています。別にルーシエは「ジャズ・ピアニスト」の他に「クラシック作曲家」としての別の顔を持っていたわけではなかったのですね。
第1楽章には「プラハ」というタイトルが付いていますが、音楽はなんだか「タンゴ」がベースになっているように聴こえます。しかも、そのテーマが、これが作られた頃にヒットしていたマイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」に非常によく似ている、というのが、さらにその親しみやすさを増しています。
第2楽章と第3楽章は、それぞれ「裸の人」と「ブエノス・アイレス・タンゴ」というタイトルですが、ここではなんともメランコリックな音楽が広がります。
意味深なのは、最後の楽章の「東京」というタイトル。確かに、冒頭にはまるで「雅楽」のようなテンション・コードが響きますが、その後には第1楽章のテーマが出てきて、ごく普通のクリシェ・コードに変わります。さらに、ヴァイオリンがスウィングでアドリブっぽいソロを聴かせたりと、脈絡がありません。ルーシエにとっての「東京」とは、こんなごった煮の世界なのでしょうか。
ただ、そんな音楽ですから、「打楽器」の、特にバスドラムあたりは、もっと締まった音でリズムをリードしなければいけないものが、エンジニアの勘違いでエコーだらけのぶよぶよの音になってしまっています。こんな「クラシカル」なバスドラは、絶対にルーシエが狙った響きではないはずです。
「2番」の方は2006年の作品。こちらは「ヴァイオリンとタブラ」という表記です。インド音楽で使われる「太鼓」ですね。でも、音楽は別にインド風ではなく、あくまでジャズ、しっかりブルース・コードも登場しますしね。しかも最後の楽章などはもろ「チャルダッシュ」だっちゃ。このハンガリーの音楽とタブラとはものすごい違和感がありませんか?
最後に入っているパデレフスキのヴァイオリン・ソナタは、「ピアニストが作ったヴァイオリンのための曲」という共通項だけで強引にカップリングされたものです。もちろん、これは単なる「抱き合わせ」に過ぎません。こんなことをしているから、このレーベルはいつまで経っても「一流」にはなれないのです。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
by jurassic_oyaji | 2014-09-07 19:56 | ポップス | Comments(0)