おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
「ビートルズ!」を作った男/レコード・ビジネスへ愛をこめて
c0039487_2365510.jpg






高嶋弘之著
DU BOOKS
ISBN978-4-907583-23-1




この本のタイトルが、ちょっとマニアックなのに気づいた人はいるでしょうか。「ビートルズ」に「びっくりマーク」が付いているのがミソ。これは、グループ名としての「ビートルズ」ではなく、彼らのファースト・アルバムとして日本で発売されたLPのタイトルなのですよ。ジャケットは同じ時期にアメリカで、やはりファースト・アルバムとしてリリースされた「Meet the Beatles!」と同じですが、曲目は日本でのデビュー・シングルの「I Want to Hold Your Hand」など、アルバム未収録の3曲と、それまでにリリースされていた2枚のアルバム(「Please Please Me」、「With the Beatles」)からそれぞれ6曲と5曲をピックアップして編集した日本独自のものだったのです。表紙のイラストは、そのLPOR-7041)のA面の模写です。「エバークリーン」が使われた「赤盤」だったんですね。「もしや」と思って調べたら、タイトルが入っている部分は、その日本盤の発売当初の帯ではありませんか。

もちろん、そのLPの編集を行ったのは著者の高嶋弘之ですから、まさに「『ビートルズ!』をつくった男」となるのですね。それがリリースされたのが1964年の4月5日(発売日には諸説あり)、つまり、今年は「ビートルズ!」が出てからちょうど50年目となるのです。これは、おそらくそのあたりを記念しての復刻だったのでしょう。というより、この時期の日本での独自編集のアルバム5枚をCD化したボックスが発売されたばかりですから、それとのミエミエのタイアップなのでしょう。そう、これは過去(1981年)に出版されたものの、とっくの昔に廃刊となった書籍の復刻版なのでした。
あの1966カルテット」の生みの親である、高嶋音楽事務所の代表高嶋弘之は、有名な話ですがかつては「東芝レコード」のディレクターとしてのサラリーマン生活を送っていました。彼がその東芝を退社して、別の会社を作ったりしている時に、乞われて書いたのが元の本です。彼が「東芝」に入社したのは1959年、そして退社したのが1969年、そんな、出来て間もない「東芝」時代のハチャメチャなディレクター人生が、語られています。
そこで紹介されているのは、なにも知らなければ突拍子もないように思えるほどの「反則技」の数々ですが、もはやそんなことは今では誰でも知っている、ごく普通に「業界」では行われていることばかりなのですね。いや、それはもはや「レコード」業界だけではなく、ありとあらゆる業種(テレビ番組、映画、あるいは書籍)が日常的に販売戦略として行っている手法なのですよ。
この本が書かれた当時ではおそらく知る人はあまりいなかったであろう、たとえばレコードの売り上げ枚数をごまかして公表したり、アルバイトを雇って作為的にラジオのリクエストをたくさん送りつけるなどという「浅知恵」は、今では誰でも知っていること、知っていても、あえてそれを知らないフリをして受け止める、というのが「賢い」人たちの生き方なのですよ。それをあたかも重要な「秘話」であるかのようにしか語れない著者の「愚かさ」のみが、とても目立ってしまうだけという、これは本当につまらない本です。表紙のマニアックさと、その内容とのあまりの落差は、まさに「1966カルテット」と共通しています。
でも、せっかく買ったのですから、賢い読者としては、そんな駄文の端はしにちりばめられた彼自身でしか語ることが出来ないはずの「事実」の重みを、味わうことにしませんか。それは、たとえば「帰って来たヨッパライ」で大ヒットを放ったフォーク・クルセダーズの第2弾シングルとして発売を予定していた「イムジン河」が、すでに出荷されてしまった時点で「発売中止」という「上から」の指示に従わざるを得なかったという事件。そこでは、当事者からの貴重な証言として詳細な事実関係を、まさに「歴史」として知ることが出来るはずです。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2014-09-09 23:09 | 書籍 | Comments(0)