おやぢの部屋2
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RICHTER/Seven String Quartets
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casalQuartett
SOLO MUSICA/SM 184(hybrid SACD)




今まで、このレーベルからリリースされている「弦楽四重奏の誕生」という2枚のアルバムによって、そういうアンサンブルの初期の形態から、ハイドンあたりによって完成された姿を俯瞰するという試みを行ってきたスイスの団体カザル・クァルテットの最新アルバムは、その第3弾として、フランツ・クサヴァー・リヒターの7曲の弦楽四重奏曲を収めた2枚組のSACDとなりました。サブタイトルは「GENESIS 1757」。リヒターがマンハイムの宮廷楽団の作曲家を務めている間に作られたこれらの作品は、まさにこのジャンルの「起源」にふさわしいものであることから、このアルバムはこのようなタイトルを付けることになったのでしょう。そして、そのあとの数字は、おそらくこれらが作られた年が1757年であることを示しています。
この「作品5」という曲集は、最初に出版されたのが1768年でしたが、その時には全部で6曲しかありませんでした。それが、1772年に出版された第2版になると、ト短調の曲(作品5/5b)が加わって全7曲となっています。この7曲がすべて演奏されている録音というのは、今回のものが最初なのだそうです。
ただ、これらが実際に作曲されたのがいつなのかは正確には分かってはいませんでした。しかし、ある音楽学者によると、同じ時代の作曲家、ヴァイオリニストのカール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフが亡くなる直前に長男に向かって語ったとされる「回顧録」によって、その年代が1757年であることが特定されるのだそうです。そこでは、当時ザクセン=ヒルトブルクハウゼン公子ヨーゼフの元にいたディッタースドルフが、その年の冬のある日、悪い予感があったので(彼の言葉では「何か、背中を冷たい手で触られたような気がして」)ソリすべりの誘いを断り、兄弟たちと一緒に、仲間が手に入れたばかりの「リヒターの新しい弦楽四重奏曲」を試演していたことが述べられています。そこではコーヒーの香りと葉巻の紫煙が漂っていたのだとか。と、そこに、さっきのソリが事故を起こして、乗っていた人が亡くなってしまったという知らせが。ディッタースドルフは「リヒターの弦楽四重奏曲」のおかげで命拾いをしたのですね。
1757年と言えば、あのハイドンが最初の交響曲を作った年になります。このリヒターの弦楽四重奏曲も、ほとんどはそのハイドンのそのころの交響曲と同じ急-緩-急の3楽章形式によったもので、第1楽章はソナタ形式で作られています。リヒターの作品の中にはバロック風の様式が見出せるそうですが、確かに「作品5/2」の終楽章では「フガート」という表記でポリフォニックな扱いが見られます。しかし、それも旋律線などはもろ「古典派風」のものです。アルバムのタイトルには「起源」とありますが、たしかにこれらはしっかり「古典派」(「前古典派」と言うべき?)の様式の中で作られているように感じられます。
そんな作品を演奏しているカザル・カルテットは、1996年に作られたスイスの若い団体。17世紀から、現代の「タンゴ」までをレパートリーにしているという活きのいいグループですが、ここでは全員がオーストリアのヴァイオリン制作者ヤコブス・シュタイナーの17世紀半ばに作られた楽器を使っています。もちろん、弓もバロック・ボウです。このSACDは、アンドレアス・プリーマーというエンジニアが写真入りで紹介されているほど「音」にはこだわったものですから、そんなピリオド楽器のニュアンスは、とてもよく伝わってきます。特に、ヴィオラが大活躍するパッセージ(これも、しっかり弦楽四重奏のフォルムが固まっていた証)などでは、独特の音色と肌触りがぞくぞくするほどのなまめかしさで伝わってくるという、すごい録音です。
もちろん、メンバー全員が伸び伸びと演奏している様子もリアルに伝わってきますよ。
ジャケットのトラック表示で、1枚目は「トラック4」2枚目は「トラック4、8」が抜けていますから、ご注意を。

SACD Artwork © casalQuartett
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by jurassic_oyaji | 2014-09-13 20:30 | 室内楽 | Comments(0)