James Galway(Fl)
Various Musicians
RCA/88843026332ゴールウェイが
RCAからリリースしたすべてのアルバムが、初出のジャケットデザインですべてそろうという、夢のようなボックスの登場、
CDが
71枚、
DVDが2枚というものすごいボリュームです。
もちろん、これらのものはほとんどがすでに何度も何度も発売になっているものですが、今ではオリジナルの形では
LPはもちろん、
CDでも入手することはまずできません。現在流通されているものは、オリジナルの収録曲を微妙に変えたり、コンピレーションとして、何の脈絡もなくあちこちの音源から寄せ集めたりと、ヒットメーカーならではの「売らんかな」の姿勢が輸入盤、国内盤を問わず見え隠れしていたものばかりです。それが、こんな風にすべてのアルバムがきちんとリリースされた時のままの姿で入手できるようになったということの意味は、かなり大きいはずです。添付された2センチ以上の厚さのあるブックレットには、録音データがきちんと記載されているのも貴重です。ゴールウェイのディスコグラフィーとして、これほど完璧なものもないでしょう。
ただ、一部のデータに間違いが見つかったのと、正確を期すという観点からは、ちょっと疑問なところも。ゴールウェイが
RCAの専属アーティストとして最初に録音セッションに臨んだのは
1975年のこと、ロンドンのキングズウェイ・ホールで5月
20日と
21日の2日間にマルタ・アルゲリッチと録音したプロコフィエフとフランクのソナタが、第1弾アルバムとしてその年の
11月にリリースされます。そして、同じセッションで、5月の
22日から
24日にかけて録音され、翌年の5月にリリースされたのが、フルートの小曲を集めた「
Showpieces」というタイトルのアルバムです。しかし、このアルバムは数年後のリイシューの際に、品番(
LRL1-5094)はそのままに、タイトルを「
The Man with the Golden Flute 黄金のフルートをもつ男」という、ジェームズ・ボンド・シリーズのタイトル「
The Man with the Golden Gun 黄金銃を持つ男」をもじったものに変えられています。もちろん、ジャケットそのものも別のものになりました(写真の真ん中)。ですから、ブックレットでこのタイトルの
LPが「
Released May 1976」となっているのは間違いなのですよ。後にこのタイトルはゴールウェイその人の代名詞として使われるようになり、つまりはこのボックスのタイトルともなるわけで、いまさら変えることもできない事情は分かりますが、「資料」としては最初のタイトルとジャケット(↓)を使ってほしかったものです。
実は、これ以前にも、ゴールウェイは他のレーベルで何枚かのアルバムを作っていました。それらのもののうち、後に
RCAレーベルとして発売されたものも、ここには含まれています。写真の左、
1973年に
PICKWICKというレーベルに録音され、
1982年に
RCAから
LPが出たモーツァルトの協奏曲もそんなものです。翌、
1974年に
EURODISCに録音されたやはりモーツァルトの協奏曲も、
1977年には
RCAレーベルとしてリリースされています。このうちの
1973年のものが、
1986年の
PICKWICK、
1999年の
RCAの
「還暦ボックス」、そして今回と、3種類の
CDが手元にありましたので、聴き比べてみました。
1986年盤は問題外の鈍い音ですが、
1999年盤ではヒス・ノイズを消したうえで、イコライジングによって生々しい音に変えています。しかし、今回のマスタリングでは、ヒス・ノイズは聴こえるものの、自然な艶やかさが味わえます。全部のタイトルを聴いたわけではありませんが、一応「
24/96でアナログテープからトランスファー」というのは本当のようで、他のものもおおむねあまり手を加えていない自然な音が聴こえます。
このボックスの途中で、録音はアナログからデジタルに変わります。その第1作が、写真の右の
1981年に録音されたライネッケのソナタと協奏曲です(このカップリングで
CD化されたのは、これが初めてで
らいねっけ?)。いかにも「デジタル」を思わせるジャケットのデザインとともに、「
SONYの機材を使用」というクレジットが、時代を感じさせてくれます。
CD Artwork © Sony Music Entertainment