おやぢの部屋2
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DURUFLÉ, V. WILLIAMS, HOWELLS, TAVENER,MOORE/Music for Remembrance
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Christine Rice(MS), Roderick Willams(Bar)
Robert Quinney(Org)
James O'Donnell/
Britten Sinfonia
The Choir of Westminster Abbey
HYPERION/CDA68020




1997年にイギリス王室のダイアナ妃が亡くなった時に、その葬儀が執り行われたのがイギリス国教会である「ウェストミンスター寺院(Abbey)」でした。その時に、式典の音楽を担当していたのが、ここの聖歌隊、「ウェストミンスター寺院聖歌隊」です。ところが、ロンドンにはもう一つ、こちらはカトリックの教会である「ウェストミンスター大聖堂(Cathedral)」というのがあります。当時のその聖歌隊の指揮をしていた人が、このCDでの指揮者、ジェイムズ・オドネルだったのです。オドネルは、2000年にマーティン・ニアリーの後任者として、「ウェストミンスター寺院聖歌隊」の指揮者に就任したのでした。なんとも紛らわしい。
もっと紛らわしいことに、オドネルは「ウェストミンスター大聖堂聖歌隊」時代の1994年に、今回と同じデュリュフレの「レクイエム」を録音しているのです。しかも、同じこのHYPERIONレーベルに!

その、「旧盤」では、オルガン伴奏の「第2稿」が用いられていましたが、今回2013年2月に録音された「新盤」ではオルガンと室内オケという編成の「第3稿」で演奏されていますし、「Pie Jesu」のソロも、少年のトレブルだったものが大人のメゾ・ソプラノに変わっています。このソリストの変更には、この作品の成立に関する基本的な認識が、以前と少し変わっていることが関係しているのかもしれません。
このCDのタイトルは「追憶のための音楽」、そしてここに集められているのは、明らかに2つの大戦の犠牲者に対する「追憶」の意味の強いメッセージが込められた作品です。つまり、デュリュフレの「レクイエム」にも、はっきりと第2次世界大戦の犠牲者への思いが込められているという認識です。これは別に観念的な話ではなく、はっきりとした「証拠」が最近になって発見されたということなのです。1990年代の後半に、アメリカの音楽学者Leslie Sproutが第二次世界大戦時のフランスの政権であった「ヴィシー政権」の資料の中から、今まで知られていなかった、作曲家に対する「委嘱」活動の記録を見つけたのだそうです。それによって、ヴィシー政権は、第3帝国に対しての「文化的なプロパガンダ」として、81人もの作曲家に作品を委嘱していて、その中にこのデュリュフレの「レクイエム」も含まれていたことが分かりました。ただ、1941年に委嘱されたのは「交響詩」なのですけどね。
ちなみに、「委嘱料」は最初は「交響詩」ということで1万フランの予定でしたが、このような大作になったために、結局3万フランが支払われたのだとか。そして、「レクイエム」は、194711月2日に、戦没者の追悼のために作られたほかの2つの作品と一緒にラジオ放送という形で初演されました。
ですから、今までの解説などには必ず登場していた「楽譜出版社からの委嘱によって作られた」というフレーズは、正確ではなかったことになります。もちろん、楽譜に記された「à la mémoire de mon père 父の想い出のために」という献辞も、額面通りには受け取れないでしょう。「鎌倉幕府の成立年代」ではありませんが、こういう新しい史観が出てくると、ちょっとドキドキしますね。いや、「キャバクラ」じゃなくて・・・。
オドネルが、「Pie Jesu」のソリストにクリスティン・ライスという「カルメン歌い」を起用したのも、そのような強い意志をこの曲に求めたのであれば納得できます。このような成り立ちを知ってしまっては、もはや少年のか細い声はとてもこの曲にふさわしいとは思えなくなってしまいます。
もちろん、カップリングのヴォーン・ウィリアムズ、ムーア、ハウエルズ、タヴナーたちの作品も、「追憶」、もっと言えば「反戦」のメッセージが込められたものばかりです。タヴナーの「The peace that surpasseth understanding」での、ロシア正教の聖歌が一瞬途切れた後に襲うオルガンの強奏は何を意味しているのでしょう。

CD Artwork © Hyperion Records Limited
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by jurassic_oyaji | 2014-09-27 22:41 | 合唱 | Comments(0)