Leopold Stokowski/
London Symphony Orchestra
DECCA/4787667(LP)
UNIVERSALの
DECCA部門では、今までに録音を売り物にした
CDのボックス・セットを何種類か出していました。それは「
DECCA SOUND」というのが2巻、「
MERCURY LIVING PRESENCE」というのがやはり2巻です。それらは40枚以上の、紙ジャケットでオリジナル・ジャケットを再現した
CDと、さらにはそれぞれ6枚組の
LPボックスとがセットになっていました。もちろん、
LPはジャケットからレーベルまでオリジナルを忠実に復刻したものです。
今回、同じような規格で「フェイズ4」が、やはり
40枚組のCDと、6枚組の
LPとが同時期に発売になりました。タイミング的には
CDの方がリリースは先だったのですが、ちょっとした手違いでまだ届いていないところに、遅く出た
LPの方が先に着いてしまいましたよ。それはそれで、とてもうれしいことでした。というのも、このボックスの最大の期待は、ストコフスキーの「シェエラザード」がオリジナル・ジャケットで手に入るということでしたからね。それが、縮小サイズでおもちゃみたいな
CDではなく、「原寸大」のLPを最初に手に入れることになりました。
1965年にリリースされたこの
LPは、おそらくしばらく経ってから国内盤の
LPが発売になりました。その時に
DECCAと提携していたキングレコードが用意したジャケットは、オリジナルとは全く異なる、全体が真っ黒の中にストコフスキーの指揮姿が入っている、というデザインだったと思います(もしかしたら、記憶が多少ゆがめられているかもしれませんが)。それははっきり言って「つまらない」デザインのジャケットでした。それが、ある日輸入レコード屋さんでオリジナルのイギリス盤をみて、そのあか抜けたデザインにすっかり魅せられてしまいました。さらに、こんな素敵なジャケットを、なぜキングはこんなひどいものに変えてしまったのか、と、怒りに似た思いも抱いたことをはっきりと覚えています。
そんな、ずっと欲しくてたまらなかった
LPが、やっと自分のものになりました。この思いは、きっとわかる人にはわかってもらえることでしょう。
もちろん、これ1枚だけではなく、他の5枚と一緒になったものには、このサブレーベルについての詳細な解説が掲載されている豪華ブックレットが付いています。それを読んでみると、なぜ「フェイズ4」というのか、という積年の問題が解けました(
クイズ4)。この「
phase」という単語は、よく技術的な現場で「位相」などと訳されていますし、この方式では10チャンネル(のちに
20チャンネル)のコンソールを使って、まず4チャンネルのテープに録音されますから、そのあたりのテクニカルな意味合いがあるのだと思っていたのですが、実際はもっと観念的なもののようでした。ここでの「
phase」は「段階」という意味だったのですね。曰く、世界で最初にステレオ・レコードが発売された
1958年が、「第1段階」、その後、ステレオ録音の様々な技術が開発されるごとに新たな「段階」に入り、
1962年にこの録音方式が開発されて、それは「第4段階」に突入したのである、という具合ですね。具体的にはたくさんのマイクを使って一つ一つの楽器を録音、それを様々な音場に設定して、迫力のあるサウンドを作り上げる、といったことなのでしょう。
元々はポップスの録音用に開発されたこの方式は
1963年から徐々にクラシックの録音にも用いられるようになり、
1964年にはついにストコフスキーという大物までが参加するようになります。
今回の
LPでは、まず保存されていたマスターテープの「転写」がものすごいことになっていました。音楽が始まる前に、盛大に「プリエコー」が聴こえてきます。さらに、もともとかなり歪みがあった金管や打楽器は、さらに派手に歪んでいることが分かります。ストコフスキーがレコードに求めたものがどんなものだったのか、それがさらに増幅されて感じられる音でした。
CDではこれがどのように聴こえるのか、比較するのが楽しみです。
LP Artwork © Decca Music Group Limited