おやぢの部屋2
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BACH/Mass in B Minor
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Lydia Teuscher, Ida Falk Winland(Sop)
Tim Mead(CT)
Samuel Boden(Ten), Neal Davies(Bas)
Jonathan Cohen/
Arcangelo
HYPERION/CDA68051/2




2010年に結成されたばかりの若いアンサンブル「アルカンジェロ」の最新アルバムです。外出には車を使います(歩かんでも行けます)。なんでも、ピリオド楽器とモダン楽器の双方の達人を集めたグループなのだそうです。2011年にはデビュー・アルバムとして、このHYPERIONレーベルからカウンター・テナーのイエスティン・デイヴィースをソリストに迎えてのポルポラのカンタータをリリースしました。そして、その2年後の201310月にはバッハの「ロ短調」という大曲をレコーディング出来るだけの信頼を勝ち得たのですから、すごい「出世」です。
このアンサンブルを作ったのが、1977年生まれのチェリスト、指揮者、そしてチェンバロも演奏するジョナサン・コーエンです。彼自身も、バロック・オペラから古典的な交響曲まで、幅広いレパートリーを誇っています。
「ロ短調」ですから、当然合唱が加わります。この合唱のメンバーも、やはり「アルカンジェロ」の中に含まれているようで、こちらも他の団体で活躍している人たちを適宜集めているのでしょうね。そこで問題になるのが、その合唱のサイズです。特にこの曲の場合は、なんと言ってもジョシュア・リフキンが最初に「各パート1人ずつ」というやり方を実践したものになるわけですから、それを採用するか否かがまず問われることになります。しかし、この方式をあらわした「OVPP」という言葉自体が今では殆ど死語と化していることでも分かるように、どうやらこれは単なる一過性の「流行」に過ぎなかったことが明らかになってしまったのではないでしょうか。というか、知ったかぶりをしてそんな「誰も知らない」言葉を使うのって、ものすごく恥ずかしくないですか?
ということで、この「最新」の「ロ短調」では、合唱は各パート4人という、おそらくピリオド楽器で演奏する時にはほど良い人数が集められています。一応5声部の場合のパート分けに対応して、総勢20人という編成で迫ります。この合唱が、なにか、指揮者がきっちりと自分のやりたいことを押しつける、というのではなく、まずメンバーの自発的な音楽を重んじて、その上で全体的にまとめる、というような作り方をしているように思えて、とても聴いていて気持ちのいいものでした。
まず、しょっぱなの「Kyrie」という合唱のフル・ヴォイスで、それが持ってまわった表現ではなく、かなりストレートに思いを伝える、というような方向であることが分かります。そして、この作品全体を通じてそのテンションの高さはずっと保たれています。ですから、例えば「Credo」の中の「Et incarnatus est」とか「Crucifixus etian pro nobis」のような、かなり深刻な表現が好まれる曲でも、決して弱々しい「守り」に入ることはなく、あくまで「攻め」の姿勢を貫いています。「Crucifixus」というテキストは、あたかもキリストを十字架に架けざるを得なかった人々を激しく弾劾しているかのように聴こえはしないでしょうか。ですから、3日後に蘇った時の「Et resurrexit tertia die」は、華やかなトランペットとティンパニに飾られて、まるでお祭り騒ぎのようです。
最後の「Dona nobis pacem」も、次第に盛り上がっていく様子がハンパではありません。こんなに生々しく感情を表に出した「ロ短調」なんて、ちょっとすごすぎます。
ソリストたちも、第2ソプラノのヴィンランド(あまりにもアバウト)を除いてはとても素敵な歌を聴かせてくれています。中でも、カウンター・テナーのティム・ミードあたりは、この合唱のセンスと良くマッチしているのではないでしょうか。そういえば、合唱のアルト・パートはすべて男声でしたね。
オーケストラは、低音にちょっとした工夫があって、とても新鮮なサウンドが楽しめます。例えば「Domine Deus」では、コントラバスのピチカートにリュート・ストップのチェンバロを重ねて、まるでシンセのような響きを出していましたよ。

CD Artwork © Hyperion Records Limited
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by jurassic_oyaji | 2014-10-19 19:55 | 合唱 | Comments(2)
Commented by JK at 2014-10-20 08:00 x
失礼します、JKです。
今回も素晴らしいCDをご紹介いただき、有難うございます。
(Hyperionですから、たぶん音も間違いなく素晴らしいでしょう。)

私事の大仰な書き方で恐縮ですが、自分が生きている(行く)上で、自分を支えてくれている大きな柱の一つが「バッハ」である身にとって、新しいバッハの命・息吹を伝えてくれるものは大歓迎です。
今後も新しい、素晴らしい作品のご紹介を宜しくお願いします。
Commented by jurassic_oyaji at 2014-10-20 19:20
JKさま、コメントありがとうございました。
おっしゃる通り、録音も非常に素晴らしいCDでした。