おやぢの部屋2
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PÄRT/Choral Works
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Stephen Layton/
Polyphony
HYPERION/CDA68056




先日、さるアマチュア・オーケストラの演奏会に行ったら、渡されたパンフレットの曲目解説の中で、「12音技法に代表される、『調性を離れてひたすら難解なものに走った20世紀半ばの音楽』は壮大な失敗だったと考えられるようになった昨今」というフレーズが目に入りました。何と大胆な見解。ただ、『』の中のちょっと持って回った言い方も気になります。そこで、もしかしたら、その部分には最初は「現代音楽」という言葉が入っていたのではないか、と、勝手に想像の翼を広げてみました。このような「クラシック音楽」を演奏する団体の場合、えてして「現代音楽」というものに対しての認識がちょっとずれている場合がありますからね。つまり、『』の中にあるような音楽のことを「現代音楽」ととらえる「現代音楽=わけのわからない音楽」という認識です。
しかし、「現代音楽」といえば文字通り「現代」の「音楽」、つまり、今現在作られている音楽になるわけで、そのような音楽がすべて、「わけのわからない」ものではないことは、少し今の時代の音楽に関心がある人であればすぐ分かるはずです。おそらく、さっきのアマオケの場合も、最初に「現代音楽」と書かれたゲラを見た誰かが、「それはちょっとまずいだろう」と言い出して、あのように作風と期間を限定した言い方に変えたのではないでしょうか。ま、あくまで想像ですがね。
つまり、今となっては「壮大な失敗」とされる(その点についても異論もあるでしょうが、少なくとも「12音技法」が失敗であったことだけは間違いありません)そのような一時期の「現代音楽」を乗り越えて最近隆盛を極めているのが、もっと人間の自然な感覚に寄り添った「聴きやすい」音楽です。その中で、最も成功を収めたとされているのが、1935年生まれのエストニアの「現代作曲家」アルヴォ・ペルトです。ここでは、合唱の分野で今まで多くの「現代作品」を紹介してきたスティーヴン・レイトンとポリフォニーの演奏によるペルトの作品を聴くことが出来ます。
まずは、このジャケットを見てください。白地にただ作曲家と演奏家の名前だけを印刷したというクールなデザインは、まるでペルトを一躍有名にしたドイツのレーベル「ECM」のものにそっくりではありませんか。
しかし、ここで聴かれるレイトンたちの演奏は、そんなデザインとは裏腹に、かなり「熱い」というか、こってりした仕上がりになっています。そう感じられるのは、ここに収められている21世紀になってから作られたものが、より自然な感覚、言い換えれば「ロマンティック」な資質を持っていることとも関係があるはずです。最初の「Peace upon you, Jerusalem」(2002)などからは、ちょっと軽めでノーテンキな女声の歌い方とも相まって、かつてペルトが持っていたある種の「冷たさ」はきれいさっぱりなくなっているような印象を受けます。
ただ、有名な「The deer's cry」(2007)では、ペルトの持ち味であったミニマルっぽさが生きていて、なかなか楽しめます。さらに、これが初録音となる2012年の作品「Virgencita」(ヴィルヘンシータ、スペイン語によって歌われます)では、前世紀のペルトの作品で聴かれた懐かしい和音が戻ってきたような感じがして救われます。ここでの最後の盛り上がりなどは、いかにもポリフォニーらしいハイテンションで迫ってきます。
宗教的なテキストで作られている曲が並ぶこのアルバムの中で、唯一異彩を放っているのが、1963年に作られた「Solfeggio」です。ひたすら「ド、レ、ミ・・・」と繰り返される中で生まれるクラスターを味わう作品ですが、爆発音はありません(それは「クラッカー」)。あのリゲティの「Lux aeterna」が1966年の作品ですから、まさにその先駆けとも言える、「20世紀半ば」ならではの音楽です。「12音技法」は失敗だったとしても、こんな風に今でも通用する作品もあったのですよ。そのあたりが、「現代音楽」のおもしろいところです。

CD Artwork © Hyperion Records Ltd
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by jurassic_oyaji | 2014-10-27 21:00 | 合唱 | Comments(0)