おやぢの部屋2
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FAURÉ/Requiem
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Marc Rigaudière(Ed)
CARUS/27.311(full score)
ISMN M-007-09482-9




フォーレが作った「レクイエム」の最新のSACDで、2011年に出版されたばかりの「1889年版」という、今まではなかった楽譜が使われていました。そこで、早速入手して詳細を調べてみました。
従来から言われていたように、この曲が作られてから現在までには3つの段階があり、最初に作られた時には5曲しかなく、オケの編成も弦楽器だけだったものが、次の段階には2曲追加されて管楽器も追加され、さらに最後の段階で、現在最も演奏頻度の高いフル・オーケストラの編成になった、というものです。今回の楽譜は、その「第2段階」に作られたとされるものを再現したものです。ただ、同じようにこの段階の楽譜とされている今までのものには「1893年版」という表示があったものですが、ここにではそれが「1889年版」となっているところが、要注意です。
この2つの年代による楽譜の一番大きな違いは、この段階に付け加えられた2曲のうちの1曲、「Offertoire」の構成の違いです。これが加えられた時には、「Ostias」で始まるバリトン・ソロの部分しかなかったものが、現在ではその前後に額縁のように「O Domine」で始まる合唱の部分が付け加えられています。問題は、それが加えられた時期で、今まではほぼ1894年までにはその形になっていたと言われていたものが、このリゴディエールの見解では「正確に年代を特定することが出来ない」というのですね。さらに、彼の主張によると、フォーレはまだ合唱を付けくわえていないバリトン・ソロだけのものを、最終の形と見なしていたというのですよ。ここで「Pie Jesu」と並んで、ほぼ同じサイズのソリストだけによる曲が入る方が、全体の構成としてもバランスが取れているのだ、と。さらに、これはあくまで憶測ですが、彼はこの合唱部分が、第3段階のコンサート・バージョン成立にかなり近い段階での追加である可能性もあるのでは、と考えているのかもしれません。
この楽譜は、予想通り従来の「ネクトゥー・ドラージュ版」と、細かいところでの表情記号やスラーの位置などを除いてはほぼ同じものでした。ただ、明らかに聴いて分かるほどの音の違いは見つかりました。「Agnus Dei」7小節目の第1ヴィオラと、「In paradisum」でのコントラバスです(もちろん、「Offertoire」の構成も)。

Agnus Dei/1889


Agnus Dei/1893


In paradisum/1889


In paradisum/1893


ところが、この楽譜を使ったはずのSACDでは、「In paradisum」のコントラバスは確かにdivisiの低音が聴こえますが、「Agnus Dei」の方は1オクターブ上げて演奏しています。このあたりは、指揮者の裁量なのでしょう。
この楽譜を入手したことの最大の収穫は、今まで「謎」だった「ラッター版」の位置づけがある程度分かったことではないでしょうか。前書きで「Sanctus」の一次資料である自筆稿のスコアと、ヴァイオリン・ソロのパート譜(コピイスト)とホルンのパート譜(自筆)のファクシミリを見ることが出来ますが、それが全く違っているのですね。パート譜は、おそらく最初に演奏された時に用意されたもので、スコアの方はその後の段階での修正が書き加えられているために、そのような違いが生じているのでしょう。つまり、「第2段階」の楽譜は、演奏された時期によってかなり異なったものになっているのですね。そして、そのスコアを見てみると、それはまさに「ラッター版」そのものでした(確かに、ラッターはこの自筆稿のスコアを元に校訂したことを、最初に述べています)。つまり、大雑把に言ってしまえば、「ネクトゥー・ドラージュ版」は、今回のリゴディエール版と同じく、ごく初期の姿を再現したもの、「ラッター版」はかなり後の姿を再現したものになるのではないでしょうか。
そうなると、「ネクトゥー・ドラージュ版」で、「Offertoire」の最初と最後の合唱が入っているのはちょっとおかしいのでは、ということになりますね。ガブリエル・フォーレは、何という宿題を残してくれたのでしょう。とても相撲の力技(それは「がぶり寄り」)なんかでは解決できません。

Score Artwork © Carus-Verlag
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by jurassic_oyaji | 2014-11-18 20:11 | 書籍 | Comments(0)