おやぢの部屋2
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BERLIOZ/Symphonie fantastique
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Sergiu Celibidache/
Swedish Radio Symphony Orchestra
WEITBRICK/SSS0164-2




チェリビダッケが1969年にスウェーデン放送交響楽団を指揮した放送音源です。この時期の放送音源のクオリティに多くを期待できないことは分かっていたので、そんなスタンスで聴きはじめたら、思いのほかいい音だったのにはびっくりです。艶やかな弦楽器、ちょっとオフ気味ですが、しっかりと存在感のある管楽器、トゥッティでのエネルギー感など、今のヘタなデジタル録音よりはるかに素晴らしい音でした。
しかし、そんな素晴らしい録音がとらえていたのは、オーケストラの音だけではありませんでした。いったいどんなマイクアレンジだったのか想像もできませんが、ステージ上の演奏音と同じほどの鮮やかさで、客席の模様がとてもリアルに録音されているのですよ。いや、普段のコンサートだったら、そうだからと言って別に問題になることはないのでしょうが、ここでのお客さんたちの騒々しさといったら、ちょっと異常です。これは11月にストックホルムで行われたコンサート、北欧では寒風が吹き荒れて歩くこともできないほど(北欧困難=歩行困難)だったのでしょうか、ひっきりなしにあちこちから咳払いの音が聴こえてきます。もう、遠慮も何もなしで、演奏中に堂々と「ゴッホーン」という大音響を発生させる神経は全く理解できません。これは、ケータイの着信音よりも悪質です。というか、こんな光景は日本ではありえませんって。
そんなマナーの悪い聴衆を前にして、スウェーデン放送交響楽団はしっかりベルリオーズとチェリビダッケに対する奉仕の念を貫いているようでした。オープニングはまさにチェリビダッケの美学が最高に発揮されたとても緊張感あふれる繊細なものです。ただ、やはりそんな喧騒に少し気が散るのでしょうか、木管あたりのアンサンブルにちょっと隙があるのが気になります。序奏が終わって提示部が始まると、やはりテーマを演奏するフルートはなんだか流れに乗れていないようなもどかしさを見せています。とは言っても、全体の音楽はそんな些細な傷には関係なく進んでいきます。ここでは提示部の繰り返しは行ってはいないのが、ちょっと意外(第4楽章の繰り返しもありません)。
そして、エンディングが近づくと、この指揮者がいきなりシフト・アップしているではありませんか。彼の悠揚迫らぬ晩年の芸風からはとても想像できないような、これは軽やかなフットワークです。ですから、中には完全に取り残されてしまっているパートまで出てきてしまっていますが、そんな姿からはいかにもライブらしい生々しさが伝わってきます。
おそらく、第3楽章あたりが、そんな彼に期待されているような大きな世界を作り上げているものでしょう。なにか、無条件に受け入れてしまえるほどの豊かな包容力がある音楽です。ただ、その中で、管楽器のソロが本当に絶対に外してはいけないところでミスを犯していたりするのが、とても残念です。
終楽章でも、やはりエンディングに向けてのターボ全開の加速が聴きものでしょう。そしてその行きつく先、最後の小節ではまさにこの世のものとも思えないような壮大なサウンドが待っていました。一瞬何が起こっているのかわからなかったのですが、そこではシンバルが「連打」されていたのですよ。普通は当たり前に1拍目に2枚のシンバルを両手で合わせて「ジャーン」とやるのでしょうが、そうではなく、吊り下げたシンバルをマレットで叩いているのです。それが最後に向かって「ジャワワワ~ン」とクレッシェンドしていくのですから、すごいものです。

実は、この部分には、ちゃんと楽譜に「シンバルの上から、スポンジを付けたドラム・スティックで叩け」という指示があるのですね。しかも、この音符にはフェルマータが付いていますから、このチェリビダッケのやり方が本当は正解なのですよ。でも、なぜか彼以外にこんなことをやっている指揮者はいないようです。

CD Artwork © Melisma Musikproduktion
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by jurassic_oyaji | 2014-11-20 20:03 | オーケストラ | Comments(3)
Commented by ひろひろ at 2014-11-20 20:50 x
こんばんは。いつも興味深く拝見しています。
Frappez un coup avec une baguetteは「スティック一本で一回叩け」ですから、トレモロが正解ということはないと思いますよ。
Commented by jurassic_oyaji at 2014-11-21 07:26
ひろひろさん、貴重なご意見ありがとうございます。
英語やドイツ語では「1回」という言い方はないので、どうなのでしょうね。
Commented by ひろひろ at 2014-11-24 12:32 x
英語・ドイツ語も「スティック1本で」という指示はありますね。少なくとも、トレモロ的な叩き方は想定していないと思います。