おやぢの部屋2
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Orchestrations by Sir Henry Wood
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Nicolas Braithwaite/
London Philharmonic Orchestra
LYRITA/SRCD216




録音されたのは1990年と1993年で、決して新しいものではないのですが、ごく最近「NML」でこのレーベルの運用が始まり、そのフラッグシップとして「ナクソス・ジャパン」のフェイスブック・ページで大々的に紹介されていたものですから、まあ、ネット配信上の新譜ということで取り上げてみました。実体のある「フィジカル」媒体としてのCDはもはや減少の一途をたどっていますから、これからはこんな形での「新譜レビュー」というものが出てくるのかもしれませんね。
もう50年以上の歴史を持つイギリスのレーベルLYRITAは、イギリスの作曲家の作品などを中心にレアなレコードを発売してきました。そんな中で、このヘンリー・ウッド卿によってオーケストレーションが施された作品を集めたアルバムなどは、珍品中の珍品になるのではないでしょうか。
1869年に生まれて1944年に亡くなったイギリスの指揮者ヘンリー・ウッドは、何よりもクラシックのお祭りとしては世界的に有名になっている「プロムス」の創始者として知られています。つんくではありません(それは「モームス」)。堅苦しいクラシック音楽を、誰にでも気軽に楽しんでもらえるように工夫を凝らした一連のコンサートの会場であるロイヤル・アルバート・ホールには、この期間中は彼の胸像が飾られることになっています。
ここには、そんなコンサートのために用意されたであろう、彼自身の編曲による作品が集められていますが、その中にムソルグスキーの「展覧会の絵」があったのが、まず聴いてみたくなった動機です。何しろ、この編曲が作られたのが1915年といいますから、あのラヴェルの仕事よりもずっと前のことになりますからね。多分、「展覧会」のオーケストラ版としては、史上2番目か3番目に作られたものなのでしょう。
その編曲のやり方は、かなり大胆なものでした。まず、大オーケストラの響きを存分に使い切った「派手」なサウンドには圧倒されますし、ラヴェル版とも、もちろんオリジナルのピアノ版とも全く異なるフレージングには、まるで別の曲を聴いている気がするほどです。そして、良く聴いてみると、ウッドは原曲から多くの部分をカットしていることも分かります。まず、「プロムナード」が、最初と、実質的なプロムナードである「Con mortuis in lingua mourtua」以外がすべてなくなっています。これはいくらなんでもやり過ぎではないでしょうか。なんたって「プロムナード」があっての「展覧会」なのですから、それがないと全然落ち着きません。まさか「プロムス」だからもう「プロムナード」はいらないなんて考えたのではないでしょうがね。
それだけでなく、それぞれの曲の中でもかなり細かいカットが施されていて、一瞬何が起こったのかわからなくなるところは数知れず、なんたって、「バーバ・ヤガー」では後半の繰り返しがすっぱりなくなっていますし、「キエフ」では最後の盛り上がりのところで50小節近くなくなっているのですから、すごいものです。そんな目立つものではなくとも、「古い城」あたりでは地味に4小節とか8小節とかちょっと気が付かないようなところでこっそりカットしていますから、かなりの知能犯。「ブィドウォ(いわゆる「ビドロ」)」に4小節の「前奏」を加える、みたいな分かりやすいのもありますし。
おそらく、ウッドとしては、常識的に考えてムソルグスキーの音楽が冗長に見えてしまったのでしょう。ですから、それを出来るだけ刈り込んで、よりスマートで見栄えがするものに変えたかったと、まるでリムスキー・コルサコフみたいなことを考えたのかもしれませんね。しかし、今となっては、そんな「おせっかい」でムソルグスキーの個性までも殺してしまった編曲は、誰にも顧みられることはありません。
まあ、「テュイルリー」をヴァイオリン・ソロでやらせたのは、なかなかかわいくて面白いアイディアだとは思えますが。

CD Artwork © Lyrita Recorded Edition Trust
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by jurassic_oyaji | 2014-11-30 21:31 | オーケストラ | Comments(0)