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SIBELIUS/Violin Concerto
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Edited by Timo Virtanen
Jean Sibelius Complete Works/
Series II, Volume 1
Breitkopf & Härtel/SON 622
ISMN979-0-004-80324-0(full score)




1996年にフィンランド国立図書館とフィンランドのシベリウス協会とによって編纂が開始されたシベリウスの作品全集は、ブライトコプフ社から順次刊行が進められています。完成の暁には、9つのシリーズ、およそ52巻に及ぶ全集が完成することになります。その内容は、

  • 第1シリーズ:オーケストラ作品
  • 第2シリーズ:ヴァイオリン(チェロ)とオーケストラの作品
  • 第3シリーズ:弦楽オーケストラと管楽器オーケストラの作品
  • 第4シリーズ:室内楽作品
  • 第5シリーズ:ピアノのための作品
  • 第6シリーズ:舞台作品
  • 第7シリーズ:合唱作品
  • 第8シリーズ:独唱曲
  • 第9シリーズ:その他

となっています。現在のところまだその半分も出版はされていません(交響曲については、4番、5番、6番がまだ出ていません)。
今回22番目のアイテムとして出版されたのは、第2シリーズの第1巻、ヴァイオリン協奏曲です。この全集のコンセプトは、初期稿や編曲なども含めてすべての作品を刊行するというものですから、ここには当然現行版のほかに、初稿である1904年版も収録されています。この楽譜は今回初めて公に日の目を見ることになったという、非常に貴重なものです。この曲は、初演の時の評判があまりに悪かったので、シベリウスは直ちに改訂を施し、そちらの方はめでたく「名曲」として今では多くの人に聴かれているものになっています。ですから、彼としてはもはや初稿は「無かったこと」にしたかったのでしょう。ただ、もちろん楽譜が出版されることはありませんでしたが、自筆稿によってたった1度だけ、特別に遺族の承諾を得て録音されたものはあります。

(BIS/CD-500)

このCDよって、その粗削りではあっても現行版にはない魅力をたたえたヴァイオリン協奏曲の初稿の姿は知ることが出来てはいましたし、掲載されていたライナーノーツによって、大まかな構造上の違いも、何とか理解は出来ていました。しかし、やはり楽譜の現物は見てみたいものだ、という願いが、やっとかなったことになります。
そこで、大まかですがその違いを見てみましょうか。上の数直線が初稿、下が現行版です(数字は小節)。

第1楽章は、こんな感じ、542小節あったものを499小節に削っています。そこでカットされたのが初稿の394小節目から458小節目までの2つ目のカデンツァです(1つ目のカデンツァは206小節目から258小節目まで)。そのほかにも、色のついた部分はモチーフの形も構成も大幅に改変されています。ほとんど同じ形の白い部分でも、オーケストレーションはかなり変わっています。
第2楽章は、小節数(69小節)も構成も全く変わっていません。変わったのは32小節目から41小節目までのソロの音型と、細かいオーケストレーションだけです。

第3楽章は、色のついた部分が別な音楽になっていて、326小節が268小節にまで削られています。ここもオーケストレーションはかなりの違いがあります。たとえば冒頭もこんな感じです。

(↑初稿)

(↑現行版)

今回のきちんと校訂された楽譜によって、さっきのCDでの演奏が必ずしも初稿に忠実ではなかった箇所も見つかりました。一番はっきりわかるのが第2楽章の65小節目(最後から5小節目)のヴァイオリン・ソロです。

CDではこのような細かい音符によるカデンツァのようなものが弾かれていますが、この楽譜では現行版と同じものになっています。これは、参考のために掲載されている自筆稿のファクシミリを見れば明らかなことで、最初に書いたこの細かい音符を、後に作曲家が鉛筆で消した跡がはっきり分かります。そこを、CDの演奏家は見落としたのでしょう。ちなみに、この部分の校訂報告で「Facsimile VII」とあるのは、「Facsimile VIII」の間違いでしょう。
全集版とは言いながら、版権はブライトコプフではなく、最初に出版したロベルト・リーナウが所有しています。ですから、将来スタディ・スコアやリダクション・スコアが出版される見込みはないのだそうです。すこあ(そこは)ちょっと不思議ですね。

Score Artwork © Breitkopf & Härtel
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by jurassic_oyaji | 2014-12-28 20:32 | 書籍 | Comments(0)