おやぢの部屋2
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BEETHOVEN/5, SCHUBERT/7
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佐渡裕/
Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
AVEX/AVCL-25862(hybrid SACD)




「運命」と「未完成」という、LPの時代には定番だったカップリングのCDなんて、今ではほとんど冗談としか思えないような気がしますが(その頃は「未完成」は「8番」と呼ばれていました)、本気でそんなアルバムを作る人がいたのですね。
ですから、このCDのライナーノーツでは「運命/未完成」というテーマで、それこそ昔からのレコード・ファンの心をくすぐるような、このノスタルジックなカップリングに関しての熱い語らいが掲載されています。ただ、そんなオールド・ファンならではのコアな蘊蓄は語られてはいるものの、肝心の、ここで聴ける演奏についての情報(単なるデータではない演奏論)が完璧に抜け落ちているのは、こういう場に掲載される「提灯ライナー」としてはかなり異常な仕様です。普通は、ここでの佐渡の指揮ぶりについて、ぜひ聴きたくなるような魅力的なフレーズこそが、最も求められているのでは、と思うのですがね。
今回の録音は、ベルリンのイエス・キリスト教会という、それこそオールド・ファンにとっては「聖地」とも言える場所で行われました。とは言っても、佐渡とベルリン・ドイツ交響楽団とがここで録音を行うのは、これが初めてではありません。2008年にはチャイコフスキーの交響曲第5番などを録音していましたね。そして、録音スタッフも現地のテルデックス・スタジオのメンバー、エンジニアはルネ・メラーです。
そんな、数々の名演を生んだ場所のアコースティックスはとてもふくよかな残響を伴った素敵なものでした。そして、最新のハイレゾ機器でとらえられた繊細な音は、SACDを通してダイレクトに伝わってきます。それは、半世紀以上前にこの同じ場所で録音されたあのカラヤンとベルリン・フィルとの名盤(もちろん、セールス的に、という意味です)の生々しい音とはまた別の魅力を持ったクールなサウンドでした。
ところが、演奏の方はというと、なんだかあまりにツルっとしていて躍動感のようなものがほとんど伝わってきません。管のソリストたちも、もっと歌ってもいいのにな、と思うのに、そこにはなぜか型にはめられた窮屈さのようなものが付きまとっているのです。オーケストラ全体からも、前へ進もうという気持ちが全く感じられません。しばらく聴いていると、ここにはテンポの収縮というものが全くないことに気づかされます。試しに、さっきのカラヤンの演奏を聴いてみると、そこでは第1楽章のゼクエンツの応酬の場面では、テンポ感など無視して次々にたたみかけている様子が見てとれます。それによって確かな「生命感」が生まれているのですね。この佐渡の演奏には、それがありません。つまり演奏は「死んで」いるのですよ。ライナーで演奏に関しては述べられていなかったのは、もしかしたらライターさんには「良心」があったからなのかもしれません。
実は、このCDのどこを見ても全く触れられていませんが、この「運命」と「未完成」は、今月末に公開される映画「マエストロ」のサウンド・トラックとして録音されたものなのです。もちろん、さそうあきらの、思わず涙をさそう名作コミックが原作ですね。そのメイキング映像を見る機会があったのですが、そこではこのイエス・キリスト教会でのセッションが紹介されていました。そして、その録音に合わせて映画を撮っているシーンでは、その音と一緒にパルス(ドンカマ)の音が流れていたではありませんか。確かに、音楽以外にこんなガイドがあれば演技は非常にやりやすくなるでしょう。ですから、そもそもこれを録音する時にそれに「対応」出来るようなテンポが要求されていたことは、充分にありえます。というより、この「死んだ」演奏が、それをなによりも雄弁に物語っています。
そう言えば、この指揮者は、テレビ番組でこんないい加減なこともやっていましたね。

SACD Artwork © Avex Classics International Inc.
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by jurassic_oyaji | 2015-01-06 22:03 | オーケストラ | Comments(0)