おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
DEVIENNE/Flute Concertos Nos. 1-4
DEVIENNE/Flute Concertos Nos. 1-4_c0039487_2217224.jpg


Patrick Gallois(Fl)
Swedish Chamber Orchestra
NAXOS/8.573230




フルーティストのパトリック・ガロワは、フィンランドの室内オーケストラ「シンフォニア・フィンランディア・ユヴァスキュラ」の指揮者(音楽監督)としても活躍していました。もちろん、彼がこのオケとフルート協奏曲を演奏する時には、自らフルートを吹きながら指揮をしていたのですね。ところが、今回ドヴィエンヌのフルート協奏曲の全集の録音が進められているというニュースを聞いて、その第1巻となるこのCDを購入してみたら、そこではなぜかオーケストラは「ユヴァスキュラ」ではなく、「スウェーデン室内管弦楽団」になっていましたよ。いったい何が起こったのかと思ってライナーを読んでみると、どうやらガロワは音楽監督をクビにな・・・いや、退任したようですね。でもなあ、その部分を読んでみると、ちょっと不思議なことになっているんですよね。
DEVIENNE/Flute Concertos Nos. 1-4_c0039487_16524650.jpg
なんと、ガロワは「2102」まで音楽監督を務めたことになっていますよ。まだ辞めてないじゃん。
フルートにおけるフレンチ・スクールの祖師とも言われているフランソワ・ドヴィエンヌは、多くのフルート協奏曲を作っています。ドヴィエンヌの楽譜の出版譜はかなりいい加減なようですが、ここではNaxosではおなじみのアラン・バッドリーの校訂による楽譜が用意されているようですから、そのあたりはきちんとリサーチが行われているのでしょう。たとえば、「第2番」を、手元にあるランパル校訂の大昔のIMC版と比べてみるとかなりの部分で違いが見つかりますからね。ただ、バッドリーが書いたライナーによるとフルート協奏曲の総数は13曲なのですが、ガロワは「12曲」の全集を録音しているところなのだそうです。
これを録音するにあたってのガロワの「心構え」のようなものを、同じライナーで読むことが出来ます。それによると、彼は今までのフルート界でのドヴィエンヌに対するアプローチはちょっと違っているのではないか、と言ってます。そこで彼は、まっさらな状態からこの作曲家に向き合い、今までとは一味違ったドヴィエンヌ像を描き出すことに務めたのだそうです。要は、「帯コピー」でも使われている「フランスのモーツァルト」という先入観をまずは取っ払って頂こう、ということなのでしょう。なんたって、彼自身はまさに「フランス人」だったのですから、後のフランスの作曲家(プーランク、ミヨー、イベールを挙げています)との類似性までをも考慮しなければいけないという、グローバルな視点ですね。
そして、やはり重要なのは時代様式へのアプローチでしょうか。彼のフルートは限りなくその時代を反映した音色に似せられているようで、時には「フィンガー・ビブラート」のようなものまで織り込んで、聴くものを驚かせてくれます。そして、なによりも装飾的なフレーズの見事なことには舌を巻くしかありません。このあたりが、「フランス人」であるガロワ自身のバランスの表れなのでしょう。
ここで演奏されている「1番」から「4番」までの4曲の協奏曲の中では、「2番」が最も有名なものでしょう。ここでのアクセントは真ん中の短調で作られた「アダージョ」楽章かもしれません。これはその前に作られた「1番」と同じコンセプトで、両端が長調の楽章に挟まれた中で、メランコリックな情緒を目いっぱい披露してくれています。
これが、次の「3番」と「4番」になると、その楽章は短調に変わることはなくタイトルも「ロマンス」となってもっと瀟洒な音楽に仕上がります。ただ、そのモティーフが、「3番」は「後宮」のベルモントのアリア、「4番」はニ長調のフルート協奏曲(あるいはハ長調のオーボエ協奏曲)のロンドという、いずれもモーツァルトの作品に酷似しているのはなぜでしょう。やっぱり、彼の本質は「フランスのモーツァルト」だったのかもしれませんね。たかが「帯コピー」だからって、侮ってはいけません。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
by jurassic_oyaji | 2015-01-10 22:18 | フルート | Comments(0)