おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
SCHÖNBERG/Moses und Aron
c0039487_2385790.jpg
Franz Grundheber(Moses)
Andreas Conrad(Aron)
Sylvain Cambreling/
EuropaChorAkademie(also by Joshard Daus)
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
HÄNSSLER/SACD 93.314(hybrid SACD)




なんたってシェーンベルクに関しては門外漢というか興味の対象外ですから、彼の「モーゼとアロン」を最初に録音したのはだれかなんて知っているわけはありません。とりあえず現行のカタログでは1966年のヘルマン・シェルヘンあたりが最も初期のものでしょうか。そして、1974年(SONY)と、1995年(DG)のブーレーズ盤が続くのでしょう。その間には、ケーゲル盤(1976/BERLIN)も録音されていましたし、なんとショルティ盤(1984/DECCA)などという信じられないようなものまで見つかりました。最近では、2006年のライブ録音のNAXOS盤も出ています(指揮はローランド・クルティヒ)。
そして、今回久しぶりの新録音として2012年に録音されたカンブルラン盤が登場した時には、CDではなくハイブリッドSACDとなっていました。つまり、世界初のハイレゾによる「モーゼとアロン」がリリースされたということになります。
これは2012年の9月2日から21日にかけてベルリン、ルツェルン、フライブルク、ストラスブールで行われた4回の公演をライブ録音したものです。会場は普通のコンサートホールですから、舞台上演ではなくコンサート形式だったのでしょう。しかし、合唱の音像などはまるでステージ上で群衆が演じながら歌っているようなリアルさが伝わってきます。全体の音が1幕と2幕とではすこしテイストが変わっているのは、メインとなった音源の収録場所の違いなのでしょう。
なにしろ、ドイツ語の台本も作曲家が書いたという途方もないものですから、まずは手元に日本語の対訳はないか、探してみました。そうしたら、CDの黎明期にSONYがそれまでのオペラのレパートリーをまとめて15本「初CD化(当たり前ですが)」した時に、CD本体には対訳は付けずに、そのシリーズを何点か購入した人だけが特典として入手できた、それらのオペラの対訳が全部載っている分厚い本が見つかりました。その中に、「モーゼとアロン」も入っていたのですよ。それはもちろん、ブーレーズの1回目の録音のためのものでした。

それを読んでみたら、かなり難解なカビの生えたような訳文ではありましたが、ト書きの部分がかなり刺激的であることが分かります。この台本の元になったのは旧約聖書の「出エジプト記」ですが、それをベースにシェーンベルクはかなりぶっ飛んだ「脚色」を行っているのですね。第2幕の第3場あたりが、おそらくそれが最もよく表れた場所なのではないでしょうか。その、多分シェーンベルクのオリジナルであろうト書きの異様な描写には、一瞬たじろいでしまいます。「4人の全裸の処女」が、「祭司にレイプ」され、「ナイフで切り裂かれ血まみれ」になる、なんてシーンは、オペラではぜんらいみもん(前代未聞)のものだったはずです。
しかし、音楽そのものはそんなシーンを具体的なイメージではなくもっと根源的な「意識」として見事に伝えるものでした。「4人の処女」が登場するところでの弦楽器のフレーズには、思わず背筋が凍りつくようなインパクトがありました。それは、これから行われることを「予言」しているのでは、とまで思わされるものだったのです。
シェーンベルクは、このような情感を調性音楽で表現するのは不可能だと感じたからこそ、「12音」などというアブノーマルな技法をでっちあげたのでは、と、その時に思いました。この技法自体は現在ではもはや誰の目にも破綻していると思われていますが、これが残した特殊な情感の表現方法としての可能性だけは、評価に値します。いや、そもそも「シュプレッヒ・ゲザンク」というような表現手段は、厳密に理論づけされるべき「12音技法」とは相容れないものなのでは、という気がするのですがね。それも含めて、彼の技法は「現代」のあらゆるジャンルで、別な形で見事に結実しているのでは、とは思えませんか?

SACD Artwork © SWR Media Services GmbH
[PR]
by jurassic_oyaji | 2015-01-20 23:10 | オペラ | Comments(0)