おやぢの部屋2
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BACH/Kantaten BWV 140, 57, 73
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Soloists
Rudolf Lutz/
Chor und Orchester der J.S.Bach-Stiftung
J.S.Bach-Stiftung/A997




だいぶ前にこちらで「マタイ」ご紹介した「ザンクトガレン・バッハ財団」のベーシックな活動は、バッハのカンタータを定期的に演奏するというものでした。ですから、まずそのカンタータのライブ録音をリリースするところから、このレーベルも活動を始めていました。「マタイ」ではとても鮮烈な印象があったので、カンタータの方もぜひ聴いてみたいと、何枚か出ているそのシリーズから有名な「Wachet auf, ruft uns die Stimme(「起きなさい」と叫ぶ声が聴こえる)」が入っている第6集を入手してみました。全部で3曲収められていますが、それぞれに録音時期が異なっています。そのBWV140は2008年、そして2010年に録音されたBWV57「Selig ist der Mann, der die Anfechtung erduldet(試練に耐える人は幸せだ)」と2011年に録音されたBWV73「Herr, wie du willst, so schick's mit mir(主よ、あなたの望むままに私はあります)」がカップリングされています。
まずは、それこそ耳にタコが出来るほど聴いてきたBWV140です。これはもう冒頭から歯切れの良いリズムとフレージングで、そんな過去の演奏のイメージを打ち砕いてくれるものでした。クレジットを見ると、ヴァイオリンやヴィオラは複数のメンバーが演奏しているのが分かりますが、よくある「1パート1人」という形態よりもこちらの方がより鋭角的に聴こえるのは、アンサンブルの方向性が徹底されているからなのでしょう。そこで、「ヴィオリーノ・ピッコロ」という楽器が使われているのも初めて気付きました。アリアのオブリガートでも登場しますが、ピリオド楽器ならではの鄙びた音色が素敵です。
と、そんなメンバー表の中に「Taille(ターユ)」という楽器があることにも気づきました。この言葉はオルガンのストップの名前としては認識していましたが、実際にそんな楽器があるとは思っていませんでした。確かに、これがどんな楽器なのかは、参考書やネットをざっと調べただけでは全く分からなかったのですから、少なくともありきたりの楽器ではないことが分かります。しかし、これはそもそもバッハのオリジナルの楽譜で指定されているものなのですから、その時代にはあったものなのでしょう。
いろいろ調べているうちに、やっとこれはバロック時代にフランスで使われていた「taille d'hautbois」という楽器であることが分かりました。「テナー・オーボエ」ですね。オーボエをそのまままっすぐ長くしたF管の楽器です。
楽譜を見ても、この楽器のパートは2本のオーボエの下段に書かれていますから、オーボエ族のアンサンブルの際に低音を担当する楽器だったのでしょう。でも、そのような楽器では、やはりバッハが重用していた丸く曲がっている「オーボエ・ダ・カッチャ」が有名ですね。バッハは、この2つの楽器を使い分けていたのでしょう。モダン楽器で演奏する時にはどちらもコール・アングレで代用されますが、例えば1984年に録音されたリリンクの同じ曲では、このパートのクレジットが「オーボエ・ダ・カッチャ」になっていたことでも、「ターユ」という楽器の当時の認識度を知ることが出来ます。今でこそ、どこのご家庭のキッチンにもありますが(それは「ラー油」)。ちなみにリリンク盤でこのパートを演奏していたのが、茂木大輔さんでした。
そんな思いがけない発見はさておき、この演奏ではソプラノのヌリア・リアルの素晴らしい声が堪能できます。
このアルバム中唯一通奏低音にチェンバロが入っているBWV57では、指揮者のルッツが自らチェンバロを演奏、レシタティーヴォで目の覚めるような即興演奏を披露しています。同じようにBW73では、コラールのブレスの部分に派手なオルガンの「おかず」が入っているというように、「マタイ」で見せてくれた自由な装飾が満載です。この曲では、テノール・ソロに櫻田亮さんが参加しています。BWV140ではちょっと頼りなかった合唱も、ここでは完璧な演奏を聴かせてくれていますよ。

CD Artwork © J.S.Bach-Stiftung St.Gallen
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by jurassic_oyaji | 2015-01-22 20:24 | 合唱 | Comments(0)