おやぢの部屋2
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SIMPSON/A Crown of Stars, SCHNITTKE/Requiem
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Lisa Edwards-Burrs(Sop)
Joseph Dietrich(Ten)
Gisèle Becker/
Cantate Chamber Singers
The Maryland State Boychoir
ALBANY/TROY1358




シュニトケの「レクイエム」の新しい録音ということで入手したCDですが、ここではどちらかというとメインはカップリングの「A Crown of Stars」という世界初録音の作品だったようです。これは、アメリカの作曲家アンドリュー・アール・シンプソンが、ここで演奏しているカンターテ・チェンバー・シンガーズの委嘱によって作曲したもので、2006年にこの合唱団による世界初演が行われています。
タイトルの「星の冠」とは、ギリシャ神話に登場するバッカス(ディオニソス)とアリアドネの物語に由来したものです。この二人は、あのリヒャルト・シュトラウスのオペラ、「ナクソス島のアリアドネ」でもおなじみですね。アリアドネは恋人のテセウスと一緒にナクソス島に逃げてきますが、なぜかテセウスは彼女をおいたままにして島から去ってしまいます。「ナクソス」というのは有名なレコード会社ですが、そこの女子社員もこんな風にカレシに逃げられてしまうものなのでしょうか。ちょっと縁起の悪い社名ですね。しかし、アリアドネの場合は、そこにやってきたバッカスとまた恋に落ち、結婚してしまうのですから、本当はその女子社員もカレシを裏切って他のオトコに走っていたんですよ。
と、「まちがいギリシャ神話」に脱線しましたが、そのアリアドネがバッカスと結婚する時にプレゼントされ、「ありがとね」と受け取ったものが、この「星の冠」だったのですね。ジャケットに使われているフランスの画家、ウスターシュ・ル・シュウールの「バッカスとアリアドネ」という絵画の中で、男が女の頭上に掲げているのが、その現物です。なんでも、これがアリアドネの死後には天に昇って「かんむり座」になったのだとか。ロマンティックですね。

そう、この作品はサブタイトルが「3部から成る結婚オラトリオ」とあるように、結婚を賛美するというおめでたい曲だったのですよ。それをよりによって死者を悼む「レクイエム」とカップリングさせるという神経は、ユニークというか、理解不能というか。
ピアニストやオルガニストとしても活躍している1967年生まれの作曲家のシンプソンには、オペラや室内楽から映画音楽、さらにはフォーク・ミュージックまで、多方面の作品があります。この作品の制作にあたっては、古典文学者である妻の協力によって、古代ギリシャ語から翻訳されたテキストなどを用いているのだそうです。
彼の音楽は、クラシックの範疇には収まらないさまざまのジャンルがルーツになっているようですので、2人のソリスト、混声合唱、児童合唱、13人のミュージシャンによるアンサンブルから成るこの作品では、まず「ディキシーランド・ジャズ」で始まったからと言って驚く必要はありません。というか、オープニングでいきなりそんなインパクトを与えた割には、それ以後は、例えばジョン・ラッターやボブ・チルコットのようなありがちの音楽が続きます。それなりのメッセージが受け止められるものも有りますが、なにかよそよそしい感じが付きまとうのは、演奏している合唱団のスキルのせいなのでしょう。そんな中で、第1部の最後に置かれた児童合唱のピース「Will There Be Any Stars in My Crown?」が、伝承曲のような素朴な味を出していましたね。
そして、お目当てのシュニトケの「レクイエム」が始まると、それはやはり今まで聴いていた「星の冠」とはちょっと次元の異なるものであることに気づきます。こちらも言ってみれば「なんでもあり」の音楽には違いないのですが、やはり「格」が違うというか、放射される「情念」のようなものが根本から違っていることを痛感させられます。合唱団も、同じ団体とは思えないような緻密さ(それでもかなり雑ではありますが)を見せていますし。この作品はもう何度も聴いていたのに、例えば「Sanctus」でのエレキ・ベースの巧妙な使い方などには、改めて感心させられます。

CD Artwork © Albany Records
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by jurassic_oyaji | 2015-01-28 20:48 | 現代音楽 | Comments(0)