おやぢの部屋2
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ANDERSON/Flute Music
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Andrew Bolotowsky(Flutes)
Gregory Bynum(Rec), David Bakamjian(Vc)
Rebecca Pechefsky(Cem)
Beth Anderson(Pf)
MSR/MS 1434




1950年生まれのアメリカの作曲家、べス・アンダーソンのフルートのための作品を集めたアルバムです。サブタイトルが「カマキリと青い鳥」、それをそのまんまジャケットにあしらったとてもかわいいデザインに惹かれて、その作曲家のことも、演奏しているフルーティストのことも全然知らないのに聴いてみる気になりました。
そのタイトル・チューンは最初に演奏されていました。これは最も若いころ、1979年に友人であり、仲間でもあった、ここで演奏しているフルーティスト、アンドルー・ボロトウスキーのために作った曲で、フルートが「青い鳥」、ピアノ伴奏が「カマキリ」なのだそうです。と言われても、別にフルートが「ピーターと狼」や「動物の謝肉祭」に出てくる「鳥」のように羽ばたいたりさえずったりする様子を描写しているわけでは全然ありませんし、ピアノがオトコを食い殺そうとするようなおどろおどろしい音型を奏でているわけでもありません。ここでは、淡々としたピアノのアルペジオに乗って、フルートは至極素朴なフレーズをだらだらと吹き続けているにすぎません。時折讃美歌の「主よ御許に近づかん」の断片が聴こえてくるのは、なんの冗談なのでしょう。
という感じで、大体この作曲家の作風が分かってきます。彼女の作曲家へのスタート地点はジョン・ケージとテリー・ライリーだったそうですが、まさにそんな経歴を裏切らない瞑想的なミニマルの世界が、このアルバムには漂っています。ただ、「ミニマル」とは言ってもスティーヴ・ライヒのような精密さ、緻密さとは全く別の、もっとずっとユルいテイストに支配されているのは、やはりケージへの傾倒がかなり強いことの表れなのでしょうか。
その「ユルさ」が、ここでは作品よりも演奏家のキャラクターによって表に出てきているのではないか、という気がとてもします。「青い鳥」での、まるでプロであることを忘れたようなフルートを聴くにつけ、はたしてこれは意図したものなのかどうなのか、分からなくなってしまうのですよ。
彼はここでは、多くの楽器を持ち替えて演奏しています。その中に「バロック・フルート」という楽器もあるのですが、これはおそらくトラヴェルソのことなのでしょう。そして、ほかにやはりピリオド楽器のリコーダー、チェロ、チェンバロを従えての室内楽も披露されています。その「スケート組曲」というのは、ダンスのために作られたもので、いかにもバロック時代の組曲を模倣したようなスタイルをとってはいますが、全体的な雰囲気は師のケージが盟友マース・カニングハムのために作った一連の作品のようなまったりとしたものです。1979年に作られた時にはヴァイオリン、チェロ、エレキ・ベース、声、テープという編成だったものを、何度か楽器を変えたり曲を削ったりという改訂が加えられて、録音時の2012年には、こういう編成で演奏されています。
ボロトウスキーは、ここではオカリナも演奏しています。その「属和音への準備」というおかしなタイトルの作品は、これもケージっぽい、あらかじめ約束事だけを決めておいて演奏者自身が音楽を作るという、これが作られた20世紀後半にはまだよく見られた技法によったものです。ここで注目したいのは、そんなプロセスで生まれた音列ではなく、まるでアナログ・シンセのように聴こえてしまうオカリナの音の方です。何の変哲もないこのプリミティブな楽器からは、まるでアープ・オデュッセイのようなポルタメントが聴こえてはこないでしょうか。
そして、もう一つの彼の挑戦が「尺八」です。その名も「Shakuhachi Run」というソロ・ピースでは、この楽器に固有の音階だけをたどたどしく吹くだけで、それらしい音楽が出来ることを見せつけてくれています。その成果はチープ極まりないものですが。

CD Artwork © MSR Music LLC
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by jurassic_oyaji | 2015-02-05 20:21 | フルート | Comments(0)