おやぢの部屋2
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ADAMS/Become Ocean




Ludovic Morlot/
Seattle Symphony
CANTALOUPE/CA21101




今年のグラミー賞で、クラシックの「現代音楽」の部門での受賞作となったのが、このアルバムです。このレーベルを扱っている国内の代理店ではここぞとばかりにそれをセールスに結び付けようと血眼になっていることでしょう。
この「Become Ocean(大いなる海に成れ)」という曲を作った人はジョン・アダムズという作曲家。実は、もう一つのクラシックのカテゴリー「最優秀管弦楽演奏賞」で受賞した曲の作曲家も同じ名前ですが、この二人は全くの赤の他人です。「Become Ocean」は「ジョン・ルーサー・アダムズ」ですが、もう一人は「ドクター・アトミック」などで有名な「ジョン・クーリッジ・アダムズ」と、ミドルネームが違っています。なんという紛らわしさ。
1953年生まれの「ルーサー」は(ちなみに「クーリッジ」は1947年生まれ)カリフォルニア芸術大学で作曲を学んだ、「クーリッジ」と同じく「ミニマリスト」という範疇で呼ばれる作曲家です。この、ジョン・ケージのメゾスティックス(何行かの単語を少しずらしながら重ね上げ、そこを縦に読んで新たな単語を生み出すというかなりマゾヒスティックな一種の言葉遊び)からタイトルを引用したという「Become Ocean」という作品は、2013年にここで演奏しているシアトル交響楽団とその音楽監督のルドヴィック・モルローからの委嘱によって作られました。その年の6月にシアトルで初演され、翌年5月にはカーネギー・ホールでも演奏されています。そして、2014年のピューリッツァー賞の音楽部門を受賞しました。
タイトルを聞いただけで、ドビュッシーの「海」あたりが頭をよぎります。しかし、なんたってピューリッツァー賞ですから、そんな分かりやすいことなんかやるわけはないな、と、ふつうは思うはずでが、そのオープニングときたら、雰囲気がそのドビュッシーそっくりでした。
さらに、それからの展開は、常に何か規則的な音型が続いているのだけれども、いつの間にかそれが少しずつ変わっていってそのうちまったく別の音型になってしまうという、まさにスティーヴ・ライヒそのもののような音楽になるというところで、ある意味「型にはまった」ものに安住している感は否めません
ただ、ライヒとは違った、広々としたフレーズと和声で描かれる世界は、かなり魅力的ではあります。もちろん、それは、例えばハリウッドの映画音楽(たとえば「ゼロ・グラビティ」)のようなテイストを持っていることで、真のオリジナリティからはかなり遠いところにあることは否定できないでしょう。
したがって、この作品でそれまでにない特別なものを見出すとすれば、それは、とてもユニークな時間軸の設定、というものではないでしょうか。この曲の実際の演奏時間は42分2秒。まあ、限りなく42分ちょうどに近い長さです。そして、その時間軸の中では、きっちり14分ごとに音が無くなる部分があって、さらにその途中のちょうど真ん中、7分のところにピークが来ています。つまり、無音の状態から7分かけてクライマックスを作り、そこからさらに7分かけて無音状態に戻る、というパターンが正確に3回繰り返されているのですね。おそらく、このことによって作曲家は「波」を描写しているつもりなのでしょう。しかし、そのあまりに正確な時間の歩みには、何か人間業を超えた「力」を感じないわけにはいきません。
そう、この曲を作るにあたっては、間違いなくコンピューターが使用されているのでしょう。それも、クセナキスの時代のものではなく、今では「非クラシック」の分野で日常的に使われているDTMの世界です。ですからそれは完成した時にはその音源によって「音」はきっちり聴くことができるようになっているはずです。それを、80人以上の生身の人間に演奏させているということが、もしかしたらピューリッツァーなりグラミーの審査員のお眼鏡にかなったのかもしれません。アメリカというのは、そういうところです。
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by jurassic_oyaji | 2015-02-11 22:58 | 現代音楽 | Comments(0)