おやぢの部屋2
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ENNA/Orchestral Works
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Katharin Rabus(Vn)
Hermann Bäumer/
NDR Radiophilharmonie
CPO/777 674-2




アウグスト・エナというデンマークの作曲家(マッサンの娘ではありません・・・それは「エマ」。しかも男だし)を知ってますか?1859年に生まれ、1939年に亡くなっていますから、同じデンマークの作曲家、カール・ニルセン(1865-1931)の生涯と丸ごとオーバーラップしています。
エナの家庭は決して裕福ではなかったため、彼は音楽的な教育を受けることはできませんでした。初めてピアノに触れたのが16歳の時、家業の靴屋のセールスマンとして働くかたわら、ヴァイオリンのレッスンに通い始めたのは17歳になってからでした。そして、夜になると彼にとっては唯一ピアノに触れられる場所だった場末の酒場でピアニストとしての仕事をしていたのです。
22歳になるまでに、彼はヴァイオリニストや指揮者として各地で働き、24歳の時には最初のオペレッタを作曲、26歳の時にはピアノの作品が初めて出版されます。そして、27歳の時に、当時のデンマークの音楽界の重鎮だったニルス・ゲーゼの目に留まり、作品が賞賛されます。
その後、彼はワーグナーの「指環」のスコアと出会い、その音楽に衝撃を受けて今まで作っていたオペラを一旦お蔵入りさせて、半年間徹底的にワーグナーの勉強をした後に、その成果をもとに大幅に書き直します。それが、彼の出世作となったオペラ「魔女」です。彼のオペラは世界中で上演され、ヴァイオリン協奏曲はカーネギー・ホールでも演奏されるようになります。
しかし、彼の晩年は精神的な病から、次第に自らを窮地に追い込むような言動が目立つようになり、そのためもあってか、彼の作品も忘れ去られていくようになりました。
このアルバムでは、彼の序曲、協奏曲、交響的幻想曲という、一晩の演奏会のプログラムにでもなれるようなレパートリーを聴くことが出来ます。まず、1894年に初演されたオペラ「クレオパトラ」の序曲です。これは、明らかにワーグナーを意識したような、同じモチーフを繰り返して盛り上げる「タンホイザー」序曲で見られる手法があちこちで使われています。そんな、かなりくどいバックに乗って、この曲の冒頭にユニゾンで登場する印象的な甘いテーマが奏でられます。このキャッチーなテーマが、最後には高らかに響き渡るという、とても分かりやすい構成です。
1897年に作られた「ヴァイオリン協奏曲」は、ワーグナーの呪縛からは少し離れて、彼のルーツである北欧的なのどかさに支配された曲に仕上がっています。第1楽章のテーマが、まさにそんな北欧風のもの、それが、まるでメンデルスゾーンのような初期のロマン派のテイストでまとめられています。独奏ヴァイオリンはこれ見よがしの名人芸を誇示することはなく、カデンツァもあっさりとしたものです。第2楽章は短調に変わり、とても深刻な味わいですが、どこかグリーグの「ソルヴェーグの歌」につながるような甘さもあります。ソロの間に顔を出すフルートの合いの手がとても素敵。第3楽章は、軽やかなダンス、その中にちょっとメランコリックな第2テーマが挟まります。
彼の最後の管弦楽作品となった「交響的幻想曲」は、3楽章形式。第1楽章は、減五度の跳躍を含むちょっと不気味なテーマで始まります。しかし、それがそのうちに次第に甘くゴージャスなテーマに変わっていくというあたりが、この作曲家の魅力なのでしょう。そんな「不安定」さと「甘さ」との葛藤のようなものが、作品全体を覆っています。第2楽章はやはり不気味なスケルツォに、トリオとして雄大なテーマが挟まるという構造です。そして、第3楽章では、6/8の軽やかなダンスの間に、管楽器による敬虔なコラールや弦楽器のメランコリックなテーマが混然一体となった不思議なポリフォニーが展開されています。
どの作品にも感じられるのが、豊かにあふれ出てくるメロディの素晴らしさです。これはおそらく、彼の天賦の才能だったのではないでしょうか。

CD Artwork © Classic Produktion Osnabrück
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by jurassic_oyaji | 2015-02-13 21:24 | オーケストラ | Comments(0)