おやぢの部屋2
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MOZART/Divertimenti
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Scottish Chamber Orchestra Wind Soloists
LINN/CKD 479(hybrid SACD)




このレーベルではおなじみの、スコットランド室内管弦楽団の管楽器奏者たちが録音したモーツァルトの「ディヴェルティメント」集です。さらにここにはディヴェルティメントだけではなく「セレナーデ」も一緒に入っています。
いずれにしても、このような作品群は、「機会音楽」という性質を持っていて、パーティーとかディナーといった特定の「機会」のためのBGMとして作られたという点では共通しています。今でこそ「クラシック音楽」などと崇めたてられていますが、そもそもはそのような「他人を楽しませる」という、ただそれだけの用途で作られたものなのです。作曲家や演奏家は言ってみれば召使、今のような「芸術家」気取りのミュージシャンの務まる仕事ではありませんでした。
一応、これらの作品を新旧のモーツァルト全集ではジャンルごとに分類しています。新全集では楽器編成によってカテゴライズされていますが、ジャンルごとの番号はありません。その点、旧全集ではちゃんと「セレナーデ第○番」と、曲種による通し番号が付けられているので、何かと便利、何より昔からの解説書や最新のCDでもこの番号は堂々と使われていますから、「こんな番号には何の根拠もない」と言ってこれを使わないような意地っ張りは、カノジョに疎まれ婚期を逃してしまいます。
それに従うと、ここで演奏されているのは「セレナーデ第11番」と「ディヴェルティメント第9番、12番、13番、14番」ということになります。「セレナーデ」では、この前の10番が「グラン・パルティータ」と呼ばれる有名な13の楽器のための作品ですし、この後の12番もやはり管楽器の合奏による「ナハトムジーク」というタイトルが付いた割と有名な短調の曲です。
「ディヴェルティメント」の方は、このSACDのライナーノーツを執筆しているロバート・レヴィンのように、この4曲に「ディヴェルティメント第8番」を加えた5曲をまとめて「ターフェルムジーク集」と呼ぶのが最近のトレンドのようです。確かにこれらはすべてザルツブルクの大司教の食卓でのBGMとして作られたものですから、これからは「ディヴェルティメント」と併用する形で「ターフェルムジーク」という、モーツァルトでは必ずしも馴染みがあるとは言えない作品名が浸透していくのでしょうか。
ところで、ここで演奏しているメンバーは、クラリネット、ファゴット、ホルン奏者が2人ずつの総勢6人です。ところが、「セレナーデ第11番」は、モーツァルトには珍しい、この時代の「ハルモニームジーク」の標準編成である、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンが2人ずつの「8声」で書かれています。でもご安心ください。今ではこの編成で演奏される機会が圧倒的に多いこの作品ですが、実はこれは改訂後の形態、1781に作られた初稿は、オーボエの入っていない「6声」の楽譜だったのです。その翌年に別の機会で演奏するためにオーボエを加えた「第2稿」が作られたのですね。このオリジナルの形での演奏は、今では非常に珍しいものになっています。
さらに、さっきの「ターフェルムジーク」は、実はオリジナルがオーボエ、ファゴット、ホルンがそれぞれ2本という編成でした。ですから、ここではオーボエのパートをクラリネットが演奏しているということになります。これも、なかなか珍しいものでしょう。
したがって、ここでの彼らの演奏は、ほとんどの人にとって「初めて耳にする」もののはずです。今までオーボエの響きで慣れ親しんでいたこれらの曲が、クラリネットがメインになったことで、何とも落ち着きのある幾分暗めの音色になっていることは、誰しも気づくこと、そこからは、あえて言わせてもらえば「こんな曲」の中にもしっかりと込められたモーツァルトの作曲家としての「意地」のようなものさえも、感じることができるのではないでしょうか。

SACD Artwork © Linn Records
by jurassic_oyaji | 2015-02-15 19:29 | オーケストラ | Comments(0)