おやぢの部屋2
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ZOFORBIT/A Space Odyssey
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ZOFO(Eva-Maria Zimmermann, 中越啓介)
SONO LUMINUS/DSL-92178(BD-A)




なんか、いろんな文字がごちゃごちゃになっているジャケットですが、「ZOFO」というのが演奏家の名前です。「ゾフォ」とでも読むのでしょうが、もちろん團伊玖磨とは無関係(それは「ぞふぉさん」)。それに、惑星なんかの軌道を意味する「orbit」とを組み合わせて作った言葉が、アルバムタイトルになっています。これだけで8文字ですから、太陽系の「惑星」をすべて置き換えられるぞ、という悲しくなってしまうほどの陳腐なデザインですね(ご丁寧に、ちょっと外れた軌道に「冥王星」までが)。
その「ZOFO」という略語の正体も、いろいろ考えるのもばからしいほどのくだらないものでした。正解は「20-finger orchestra」ですって。「20」を「ZO」に置き換えるというのは、べリオの「Opus No. ZOO」からの影響でしょうかね。疲れることをやってくれたものです。
その名前にもあるように、これは「20本の指」、つまり4本の腕でピアノを弾くという、ピアノ連弾の形、スイス人のツィンマーマンと日本人の中越啓介という男女が2009年に結成したペアチームです。写真を見ると、別に美男美女というわけではないのに、何かファッショナブルなセンスが光っていて、ビジュアル的にもなかなかのものですし、もちろん演奏もそんな外観を裏切らない華やかな名人芸が光っています。
ジャケットでも分かる通り、このアルバムのメインは、ホルストの「惑星」です。ホルスト自身が作った楽譜としては「2台ピアノ版」→「オーケストラ版」→「ピアノ連弾版」という3つの形が知られていますが、ここではそれらをすべて参考にして新たにこの二人が編曲を行った「ZOFO版」が使われています。今まで2台ピアノ版も含めて多くのピアノ・デュオの演奏を聴いてきましたが、これはその中でも最高位に置かれる素晴らしいものに仕上がっています。変拍子、ヘミオレといった、この曲独特のリズム感に、目の覚めるような鮮やかなスキルで切り込んでくるところなどは、まさに現代ならではの「惑星」という爽快感があります。「木星」なども、有名な聖歌の部分をこともなげにあっさりと処理しているあたりが、とても潔くていい感じ。このテーマを演歌調でこってりと歌い上げている某シンガーのいやらしさが耳についていた人にとっては、これは格好の「口直し」になるのでは。
テンポもかなり速めなので、オーケストラ版とは全然イメージが変わって聴こえてきます。というより、100人のメンバーによるオーケストラでは絶対に出来るはずのない精密な表現が成し遂げられていることに、おそらくオーケストラの奏者などは嫉妬感を抱くことでしょう。もちろん、そこまで感じさせることのできるピアノ・デュオは、なかなかいません。
この「惑星」を挟む形で、エストニアのシサスクの「The Milky Way」と、アメリカのクラムの「Celestial Mechanics」という、同じ編成のやはり宇宙がらみの作品が演奏されています。ただ、編成は同じでも、ここで彼らが行っているのはピアノの弦に異物を挟んで音を変えるという「プリペア」という操作です。世代の異なるこの2人の作曲家の、それぞれの「プリペア」の妙を、楽しめますよ。若いシサスクは、あくまでサウンドとしての面白さの追求、ケージに近い世代のクラムは、そこにもっと別の世界を込めている、といった違いでしょうか。余談ですが、最近さる自称「現代音楽演奏家」が、このようにピアノに手を加えることを「プリペアドする」と言っているのをネットで見つけてしまいました。なんと恥ずかしい。
そして、最後にはやはりアメリカの若い世代のデイヴィッド・ラングの「Gravity」という、まさに宇宙ならではのタイトルの、下降スケールが「重力」をあらわしている穏やかなピースで、「宇宙の旅@キューブリック」の幕が下ろされます。
BD-AとCDが同梱されていますが、もちろんBD-Aで聴きました。そのディスプレイで録音スペックが間違って表記されていたのが、ちょっと目障りでしたね。

BD-A Artwork © Sono Luminus LLC
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by jurassic_oyaji | 2015-02-25 21:32 | ピアノ | Comments(0)