おやぢの部屋2
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カルメンの「版」について
 今ニューフィルで「カルメン」を練習しているので、この際だから「版」の問題をきちんと調べてみたいな、と思い立ちました。昔から「オペラ・コミーク版」とか「原典版」とか言われていましたが、それをきちんと特定できるぐらいのスキルを身に着けたいと。なんたって「版マニア@TENSEI」ですから。
 そこで、まずはその基礎資料である楽譜を入手するところから始めます。一番手に入りやすいのがドーヴァー版にもなっているギロー版。これはアマゾンですぐ買えました。値段は3987円。いくらPDだからといっても、分厚い大判フルスコアがこんな値段なんて、申し訳ないぐらいです。
 そして、もう一つ、これは絶対に必要な「アルコア版」です。これはさすがに日本のアマゾンにはありませんでしたが、ドイツのアマゾンにはありました。しかし、結構高いですね。167ユーロ、それに送料を加えたらドーヴァー版とは一桁違ってしまいます。いくらなんでも、単なる趣味の問題にそこまで使うのはどうか、と思いましたが、考えてみればいまどきちゃんとしたオーケストラのコンサートに行けば、ちょっといい席だとそのぐらいかかることを思えば、そんなに気にすることはないようにも思えてきます。さらに、もう少し安いところはないか探したら、アメリカのSheet Music Plusが、168.95ドル、送料込だと194.9ドルでしたので、これで手を打ちましょう。そこに注文したのが2月8日でした。もちろん、送料は一番安いランクですからそんなにすぐに送られてくることは期待できません。
 そして、2月18日に「発送しました」というメールが来ました。
 でも、この送料だと、宅急便みたいな「追跡」は出来ないんですね。あとはひたすら荷物が届くのを待つだけです。
 そしておととい、ついに荷物が届きました。注文して3週間ですね。まあ、こんなもんでしょう。
 右がアルコア版、布張りの表紙で、厚さが5センチもあります。
 「カルメン」というオペラ、今でこそ何の疑いもなく「オペラ」という呼び方をされていますが、そもそもは「オペラ・コミーク」というジャンルの作品でした。つまり、歌の間にセリフが入るという「歌芝居」ですね。それこそ、今回序曲を使うモーツァルトの「魔笛」と全く同じ形態だったのです(「魔笛」も、本当は「ジンクシュピール」と呼ばれるべき作品です)。そして、初演もパリのオペラ・コミーク劇場で行われたのです。しかし、この初演の直後に、ビゼーは亡くなってしまいます。そこで、ウィーンでの初演に際しては、友人のエルネスト・ギローが、セリフの部分をすべてレシタティーヴォに直して(ということは、歌手の歌うメロディとバックのオーケストラの部分を「作曲」して)「オペラ」として上演、これがフランスのシューダンス社から出版されることになります。ドーヴァー版は、そのシューダンス版を元に出版されたものなのですね。
 しかし、1964年に、フリッツ・エーザーの手によって、あくまでビゼーが書いた楽譜に忠実なものを再現するというコンセプトの「原典版」が作られ、ドイツのアルコア社(現在はベーレンライターの傘下にあります)から出版されました。これが「アルコア版」です。
 ざっと眺めてみましたが、ほんとにびっくりするほど違っているところがありました。何しろ、セリフの量がハンパではありません。ギローがレシタティーヴォにしたのは、そのうちのほんの少しだということがわかります。かなり重要なプロットが省かれたりしていますから、まるでCMでカットされた映画を見ているみたいですね。音楽もあちこちカットされていますし。
 それと、NMLで見つけた「オペラ・コミーク版」と銘打った音源が、単にギロー版のレシタティーヴォをセリフに変えただけというお粗末なものであることも分かってしまいました。というか、ナクソスのスタッフのやることなんて、そんなもんだという、あきらめの材料がまた一つ増えた、というだけのことですが。情けなさすぎます。
 このあたりのトピックスを、とりあえず「かいほうげん」用にまとめてみるつもりです。と思っていたら、演奏会のプログラムの原稿を頼まれてしまいましたよ。そんな予感はあったのですが、別にそのために楽譜を注文したわけではありませんよ。でも、まさにグッド・タイミング、引き受けてやろうじゃないですか。
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by jurassic_oyaji | 2015-03-04 22:29 | 禁断 | Comments(0)