おやぢの部屋2
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MUSSORGSKY/Pictures at an Exhibition
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Ferruccio Furlanetto(Bar)
Valery Gergiev/
Mariinsky Orchestra
MARIINSKY/MAR0553(hybrid SACD)




2009年にリリースを開始したサンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場が運営する自主レーベルMARIINSKYは、スタート時点ではロンドン交響楽団のLSO LIVEと同じクルー、ジェイムズ・マリンソンをプロデューサーとするクラシック・サウンドのメンバーが制作を担当していました。それが、2011年ごろから、マリインスキーのサイドのウラディーミル・リアベンコという人がエンジニアとして加わるようになり、現在ではプロデュースからマスタリングまでのすべての作業を彼一人でこなしているように、クレジットの上では見られます。
今回のSACDでは、最新のリアベンコによる2014年の録音と、マリンソン達の初期のスタッフによる2010年の録音がカップリングされているので、おのずとその音の違いが分かってしまいます。マリンソン達が目指したのは、あくまでクリアでナチュラルな音、LSOではそれでちょっと物足りない面がありましたがMARIINSKYでは、録音会場の違いからでしょうか、なかなか良い結果が出ていたような気がします。しかし、リアベンコは、そんな「お上品」なものではなく、もっと骨太でパワフルな音を目指しているように思えます。ただ、そのために犠牲になっている部分も多く、残響成分や楽器同士の干渉の処理がうまくいっていないのではないか、というところが頻繁にみられます。ですから、正直言って完成度はあまり高くなく、「商品」としてはちょっと問題があるような印象を受けてしまいます。
ムソルグスキーの作品が3曲収められたこのアルバムでは、「展覧会の絵」と「禿山の一夜」が、そんな、2014年のちょっとおおざっぱなセンスで録音されたものです。ただ、演奏自体は非常に興味深いもの、どちらの曲も2000年にウィーン・フィルと録音していました。これは手元にあったので改めて比べてみたのですが、「展覧会の絵」ではまるで別の曲だと思えるほどの違いがありました。もちろんオーケストラが別だということもありますが、例えば今回のマリインスキー管との「古城」での誇張された表情づけや、自由に伸び縮みするテンポなどは、いかにもオーケストラとの深い信頼関係が感じられるものです。おそらくウィーン・フィル相手ではさすがのゲルギエフでもそこまでは踏み込めないという面があったのではないでしょうか。そんな丁寧な、というか、ねっとりした演奏ですから、「古城」の演奏時間はウィーン・フィルでは4分44秒だったものがここでは5分26秒にもなっています。全体でも32分だったものが35分近くまで長くなっています。
ただ、「キエフ」の最後近くで以前はショッキングに聴こえていた、バスドラムだけがちょっとずれて叩かれる部分が、今回も同じように演奏されていました。2000年当時ではそのように印刷された楽譜しかなかったので、仕方がなかったのかもしれませんが、今ではこちらこちらにあるように新しい楽譜が何種類も出版されて、その部分は完全なミスプリントだと分かってしまっているのですから、これでは演奏を云々する以前に指揮者としての最低限の資質が問われてしまいます(この件に関しては、2008年の段階で同じことをやっていたマリス・ヤンソンスも同罪です)。
「禿山の一夜」では、なんと原典版が使われていました。これも、ウィーン・フィルとではリムスキー・コルサコフ版を使っていたのですから、いかにこのオーケストラに遠慮していたかが分かります。でも、今回の演奏からは、以前アバドの指揮で同じものを聴いたときほどの荒々しさは感じられなかったのはなぜでしょう。
2010年に録音されていたのが、ショスタコーヴィチ編曲の「死の歌と踊り」です。これは繊細な録音は心地よいものの、ソリストのフルラネットがちょっと物足りない気がしてしまいます。ほんと、全ての面で完璧なアルバムなんて、なかなかありません。

SACD Artwork © State Academic Mariinsky Theatre
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by jurassic_oyaji | 2015-03-07 20:42 | オーケストラ | Comments(0)