おやぢの部屋2
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Music in Sanssouci



Hans Martin Linde(Fl.tr.)
Johannes Koch(Va.d.g.)
Hugo Ruf(Cem)
DHM/82876 69998 2



この、まるでDGの「Originals」みたいなデザインのジャケット、DEUTSCHE HARMONIA MUNDIの昔のカタログの復刻版のシリーズです。斜めになっているのが、オリジナルのLPジャケットというわけですね。その中で目についたのが、このアイテム、「サン・スーシでの音楽」というタイトルが付いたこのジャケットには、確かに見覚えがあります。それもそのはず、家へ帰って探してみたら、この元のLPの国内盤が見つかりました。しばらく会っていなかった友人に久しぶりに再会したような気分です。
タイトルの通り、ここに収められているのは、プロシャ王フリードリッヒ大王が、1740年にポツダムに建設した宮殿、「サン・スーシ」で演奏されたであろう曲です。音楽や学問(「算数師」ね)に造詣が深く、自らもフルートを巧みに演奏したというフリードリッヒ大王の許には、彼のフルートの師でもあり、音楽理論家でもあったヨハン・ヨアヒム・クヴァンツや、大バッハの次男、カール・フィリップ・エマニュエル・バッハなどが集まり、宮殿では毎夜のようにコンサートが開かれていたのです。
オリジナル楽器による演奏の、まさに第1世代と位置づけられるフルート奏者ハンス・マルティン・リンデが中心になったこのアルバムでは、当然のことながら、大王がたしなんだフルートの曲、クヴァンツ、エマニュエル・バッハ、ゲオルク・ベンダ、そして大王自身のソナタを聴くことが出来ます。しかし、そのような「王のサロン」の再現を味わうという興味の他に、私たちにとっては、これが録音された1961年当時のオリジナル楽器へのアプローチがどんなものであったかという、ある意味「資料」としての価値を見逃すわけにはいきません。
事実、最近のオリジナル楽器の演奏を聴き慣れた耳には、この演奏はとても奇異に映ることでしょう。トラヴェルソ(バロック・フルート)はビブラートを思い切りかけて、低音もしっかり倍音を乗せるという、モダンフルートと全く変わらない奏法を貫いているのですから。さらに、チェンバロの音色も何か硬質な感じ、プレクトラムで「はじく」という軽やかさが全く感じられません。手元にある昔のLPには、きちんと楽器のデータが掲載されているのですが、それを見てみたら、チェンバロは「ノイペルト」、あの、オリジナル楽器とは縁もゆかりもないチェンバリスト、カール・リヒターが愛用した「モダン・チェンバロ」ではありませんか(最近でこそ、このメーカーも「ヒストリカル」を作るようになっていますが、1960年当時は「モダン」しか作っていなかったはずです)。トラヴェルソは一応18世紀の楽器のようですが、とりあえず木管でありさえすればいい(音程があまりに良すぎるので、もしかしたらキーがたくさんついた楽器かもしれません)、当時の奏法を研究したり、ヒストリカル・チェンバロが一般的に出回るのには、もう少し待たなければいけなかったという、そんな時代だったのですね。モダン・チェンバロとバランスを取るために、繊細なトラヴェルソから無理をして大きな音を出そうと頑張っているのがありありと分かるちょっと涙ぐましい演奏、こういうものが現実に「音」となって残っていて、この過渡的な時代を生々しく体験できるのですから、これは何物にも代え難い貴重な「記録」です。ただ、それには欠くことの出来ない楽器のデータが、このCDにはどこにも見当たらないのはなぜでしょう。LPにはなかった録音データはきちんと載っているのですから、楽器のデータだけを外したのは合点がいきません。もし、「オリジナル」を謳うために故意にモダンチェンバロを使っていることを隠蔽したのであれば、これほど情けないことはありません。
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by jurassic_oyaji | 2005-07-27 20:06 | フルート | Comments(0)