おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
XENAKIS/Pléïades, Rebonds
c0039487_20380425.jpg




加藤訓子(Per)
LINN/CKD 595(hybrid SACD)




今までは、このレーベルにペルトやライヒといった「ミニマリスト」たちの打楽器作品を録音していた加藤訓子さんが、ついにクセナキスに挑戦してくれました。今回も加藤さん自身の日本語によるライナーノーツが読めるというのも、楽しみです。ただ、このライナー、一部に編集ミスがありますから、ご注意を。
ここで彼女が選んだ曲は、「プレイアデス」と「ルボン」です。「ルボン」は一人の打楽器奏者のための作品ですが、「プレイアデス」はストラスブール・パーカッション・アンサンブルという、6人の打楽器奏者のグループのために作られたものですから、当然一人では演奏することはできません。そこは、ライヒなどではすっかり常套手段となった多重録音で、一人で6人分のパートを演奏しています。これがまず驚異的。ライヒのような単純なフレーズの繰り返しならいざ知らず、クセナキスのもう真っ黒けになるほどたくさんの音符にまみれていて、1回演奏するだけで死にそうになる楽譜を、ひたすら前の自分の録音を聴きながらもう5回も演奏するなんて、気の遠くなるような作業なのではないでしょうか。
彼女は、そんなとんでもないことを難なくやり遂げただけではなく、その「映像」まで作ってしまいました。それが、SACDと一緒にパックされているDVDです。ここでは、なんと「6人」の「動く」加藤さんがこの難曲を演奏している様子を見ることが出来るのです。それは、なんともスリリングな体験でした。もちろん、音はSACDで聴けるものと全く同じものですが、それぞれの加藤さんはそれにきっちりシンクロさせてカメラの前で演奏しています(たまに音とずれていたりしているのはご愛嬌)。それを6人分撮影して、さらにそれらを合成、おそらく、こちらの方が録音よりも数倍手間がかかる作業だったのではないでしょうか。
その、横一列に並んだ加藤さんたちは、彼女たちのトレードマークであるキャミソール姿で、肩から先の腕を露出させています。その12本の腕が、クセナキスのスコアに従って微妙にズレながら激しく動き回る様子は、まるで一編のダンス、そのダイナミックな動きには思わず見入ってしまいます。特に、最後の「Peaux」という、皮を張った太鼓類を演奏するパートでは、まるで和太鼓を叩く時のようにむき出しの腕を高く挙げるポーズが思いっきりセクシー。和太鼓奏者たちがなぜ褌いっちょうで演奏しているのかが分かったような気がします。この曲の最後近くで、6人が完全にユニゾンになるところなどは、見ものですよ。
こんなものを見てしまうと、音だけのSACDでは物足りない気になってしまいます。音自体は、SACDの方が格段に繊細な音で、音色の違いなどがはっきり聴き分けられるものなのですが、トータルの情報量としては映像の方が圧倒的に多くなっています。打楽器の場合は、このような「肉体」とのコラボレーションで、与えられる印象はさらに強烈になって行くのでしょう。
ここでDVDになっているのは、「プレイアデス」の4つの曲の中の2番目から4番目の3曲だけです。それぞれに扱う楽器が異なっているので映像も作りやすいのでしょうが、1曲目の「Mélanges」はそれらの楽器が全部登場しますから、それを6人分並べるのは大変だったのでしょう。
もう1つの作品、「ルボン」は、聴いただけではとても一人で演奏しているとは思えないほどのたくさんの打楽器が使われています。あんな映像を見てしまうと、これも多重録音かも、などと勘繰られてしまいそうですが、もちろん加藤さんは一人で演奏しているはずです。というか、この作品は彼女にとっての一つの「目標」なのだそうですね。これを完璧に演奏できるプレーヤーになりたいと、常々思っているのだとか。これをDVDで見られたら、彼女の本当の凄さが分かるのかもしれません。もちろん、映像はパンツ姿(それは「ズボン」)。

SACD Artwork © Linn Records
[PR]
by jurassic_oyaji | 2015-03-25 20:41 | 現代音楽 | Comments(0)