おやぢの部屋2
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Claviorganum
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Thomas Scmögner
PALADINO/PMR 0033




先日、親戚の結婚式に参列した時には、最初のうちはデジタルキーボードで、ピアノのサンプリング音源によるBGMが演奏されていました。それが、花嫁の入場とともに、その同じ楽器から勇壮なオルガンの音でローエングリンの結婚行進曲が聴こえてきたときには、ちょっと感激してしまいました。別になんということはないのですが、今までピアノだったものがいきなりオルガンに変わってしまったのに、素直に驚いてしまったのですね。
そんな驚きを与えたいという気持ちは、昔の楽器職人も持っていたのかもしれません。現代のデジタルキーボードでは当たり前にできることを、その頃の人は涙ぐましいほどの力技を駆使して実現していたのです。そんな気合いのこもった楽器が、この「クラヴィオルガヌム」です。
ジャケットにデザインされているのが、その楽器の全体像です。まるで昭和時代の「茶箪笥」を思わせるような外観ですね。鍵盤があるので一見ポジティーフ・オルガン、事実、下半分はポジティーフ・オルガンそのものです。ただ、その上になんと「フォルテピアノ」が乗っかっているのですね。この場合は「スクエア・ピアノ」と言って、弦が横に張られているタイプのフォルテピアノです。ただ、鍵盤は1つかありません。それがピアノフォルテのアクションやオルガンのアクションに連動していて、ストップによってどちらか一方、あるいは両方同時に音が出せるようになります。さらに、それぞれに音色を変えるストップもいくつかついています。つまり、それらのストップを組み合わせることによって、多彩なサウンドを作り出すことができる、という優れものなのですね。
そんな音色の変化のデモンストレーションとしては、最初に演奏されているモーツァルトのファンタジーk 397などは恰好なサンプルでしょう。序奏はフォルテピアノだけで演奏されますが、かなりプリミティブな音、しかもダンパー・ペダルはありませんから、前の和音の響きが消えないまま次の和音に続くといった、ちょっとやかましい音に聴こえます。それが、いきなり明るい音色に変わったのは、そこにオルガンが加わったからです。この鮮やかさはなかなかのもの、これを最初に聴いた人はかなり驚いたことでしょうね。ただ、鍵盤が一つということは、同じ鍵盤で出された音でも、それぞれの鍵盤楽器の特性の違いから、片方はすぐに減衰してしまうのに、もう片方はずっと音が鳴り続けるというちょっとシュールな状況が出現してしまいます。
その次の曲はヨハン・ゲオルク・アルブレヒツベルガーという「ベートーヴェンの先生」ということでのみ音楽史に名前を残している作曲家のオルガンのためのかわいい3つの前奏曲ですが、これはそのままオルガンだけで演奏されています。だったら、こんな楽器を使わなくてもいいに、と思っても、これは純粋にオルガン・パートだけの音を聴くサンプルだと理解すべきでしょう。
この珍しい楽器は、ウィーン美術史美術館の中に設立された古楽器博物館というセクションのコレクションです。ですから、このCDもその美術館とレーベルとの共同制作によって作られています。ブックレットの最初には「このCDはウィーン美術史美術館とPaladino Musicレーベルとの共同制作です」としっかり記載されていますね。ところが、このCDは2014年にリリースされたばかりなのに、録音されたのは2003年という「大昔」だったので、調べてみたら、これは全く同じジャケットで2004年にスイスのACANTHUSというレーベルからリリースされていたものでした。つまり、「共同制作」を行ったのはPALADINOではなくACANTHUSだったのですね。その後、おそらく、このスイスのレーベルはPALADINOに吸収でもされたのでしょう。ですからこれは実質的にはリイシュー。にもかかわらず、さも新譜であるかのように売り出したというのは、いつもながらのこのウィーンのレーベルのいい加減さの端的な現れです。

CD Artwork © Kunsthistorisches Museum Wien
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by jurassic_oyaji | 2015-04-24 22:08 | オルガン | Comments(0)