おやぢの部屋2
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MOZART/Flute Quartets
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Karl-Heinz Schütz(Fl)
Albena Danailova(Vn)
Tobias Lea(Va)
Tamás Varga(Vc)
CAMERATA/CMBD-80008(BD-A)




「カメラータはもうBD-Aからは撤退した」と教えてくれたのは誰だったでしょうか。こんな新譜が出たのですから、どうやらそれは誤った情報だったようですね。そんな、このメーカーに対しても失礼なデマを流した人には、しっかり謝ってほしいものです。
とは言っても、品番からも分かるようにこれは「8枚目」のBD-Aです。「1枚目」が出たのが2012年の12月ですから、2年半近く経ってもそれしか出せていないというのでは、やはり「辞めてしまった」と思われても仕方がないかもしれませんね。そんな、言ってみれば「貴重」なフォーマットで、大好きなシュッツの演奏が聴けるのですから、これはラッキー。
シュッツと言えば、彼の前任者としてウィーン・フィルの首席奏者を務めていたのがヴォルフガング・シュルツという人だったので、何かと混乱してしまうかもしれません。「カール=ハインツ・シュルツ」とかね。実際、シュッツはシュルツたちが創設したアンサンブル「アンサンブル・ウィーン・ベルリン」にも、シュルツの後釜としてメンバーになっていますから、何かと「シュルツの後継者のシュッツ」みたいな、とても紛らわしい言い方が、今回のBD-Aのライナーノーツにも登場しています。そこでは、今回録音したモーツァルトの四重奏曲は、このレーベルとしてはシュルツで録音したかったものが、様々な事情で結局シュッツによってなされることになった、みたいな書き方をされていますからね。確かにシュルツは偉大なフルーティストであったことに疑いはありませんが、個人的にはあまり好きではありませんでしたし、彼の音はウィーン・フィルのサウンドの中ではちょっと異質なのでは、と感じていました。もっとも、逆にそんな音だからこそ、この「保守的」なオーケストラからもっと斬新なサウンドを発信することが期待されていたのかもしれませんが。
シュッツは、しかし、そんな「期待」とは全く別の姿でウィーン・フィルのサウンドのクオリティをワンランク上げることに貢献していました。彼の音はシュルツのようにしゃかりきに自己主張するものではなく、いともしなやかにオーケストラの中に融け込んだ上で、サウンドにきらめきを与えるというものだったのです。
このモーツァルトで共演しているのは、もちろんウィーン・フィルのメンバーたちです。その中で、ヴァイオリンにこのオーケストラ初の女性コンサートマスターとして注目を集めたアルベナ・ダナイローヴァが参加しているのにまず注目です。まさに、これからのウィーン・フィルを担う新星の共演ですね。ヴィオラのトビアス・リー、チェロのタマーシュ・ヴァルガともども、伝統にあぐらをかかない未来志向のモーツァルトが体験できます。それは、音色はとてもまろやかで心地よいものなのに、今モーツァルトを演奏することの意味がきっちりと伝わってくるものなのですから。彼らは、かなり早めのテンポで、余計な「タメ」で音楽を停滞させることなく進めていきます。それでいて、必要な情感は的確に表現されています。それは、ピリオド楽器の登場によって表現の根底が崩れ去ったモダン楽器奏者たちが出した、一つの回答のようにも思えてきます。さらに、この4人のつかず離れずのアンサンブルの妙味には感嘆させられます。録音のせいもあるのでしょうが、それぞれの楽器がとても雄弁に歌っていることもとてもよくわかります。
もちろん、彼らが使っている楽譜は最新のヘンレ版です。こちらで指摘したハ長調の四重奏曲の第2楽章の第4変奏の後半で、新全集とはヴァイオリンとヴィオラのパートが入れ替わっている部分などは、そんな録音ですからはっきり聴き取ることができます。
例によって、オリジナルの4曲以外に、オーボエ四重奏曲をフルートで演奏したものも収録されています。この曲の第2楽章でのシュッツのピアニシモは絶品です。

BD-A Artwork © Camerata Tokyo, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2015-04-29 20:32 | フルート | Comments(0)