おやぢの部屋2
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BACH/St Matthew Passion(BWV 244b)
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James Gilchrist(Ev), Matthew Rose(Jes)
Elizabeth Watts(Sop), Sarah Connolly(Alt)
Thomas Hobbs(Ten), Christopher Maltman(Bas)
Richard Egarr/
Academy of Ancient Music, Choir of the AAM
AAM/AAM004




バッハが「マタイ受難曲」を作ったのは1727年ですが、その後バッハ自身の手によって1736年に大幅に改訂され、それが決定稿として現在ではほぼすべての演奏の際に使われていました。しかし2004年になって、改訂される前の1727年の「第1稿」がベーレンライターから出版され、それを使うアーティストも徐々に出て来るようになりました。最初にCDとして世に出たのはモダン楽器によるビラー盤、そしてピリオド楽器によるシーモア盤に続いて、最新録音のこのエガー盤がリリースされています。こんな風に多くのヴァリアントが登場することによって様々な面からその作品を味わう楽しみが増えるというのは、歓迎すべきことです。
エガーの場合は、この「第1稿」をオランダでは最初に演奏した、という実績があるそうです。それから何度もこの楽譜で演奏を行ううちに、自分のオケ(AAM)で録音するときには、絶対これを使おうと心を決めていたのだそうです。そんな、エガーの熱い思いの成果が、このCDです。
「第1稿/BWV244b」の楽譜はもちろん誰でも購入できるのですが、今はまだ大判のフルスコアしか出版されていないので、あまりお手軽ではありません。スタディ・スコアになって安くなったら買おうと思っているので、現物の楽譜を見たことはありません。ですから、改訂版(1736年稿/BWV244)との相違点は、今のところCDについてきたライナーノーツを参考にして推測することしかできません。それがたとえば、アリアのソリストが変わったり、オブリガートの楽器が変わったり、あるいは曲そのものが別のものになっていたり、というはっきりしたものでは問題ありませんが、もっと細かい旋律のちょっとした違いなどは、場合によっては同じ楽譜を使っても演奏家が別のもののように演奏してしまっていることもあるので、それが楽譜による違いなのかは決めかねるようなところもあります。ただ、「装飾」に関しては、「第1稿」では骨子となるメロディだけを書いて、残りは演奏家に自由な装飾を許すというものだったのが、「改訂版」ではバッハ自身がきっちり装飾まで楽譜に書いているのでは、という傾向のようなものは見て取れます。
それは、最初に出たビラー盤では、「改訂版」に比べてあまりに装飾が少ないことからも推測できます。おそらくビラーは、かなり忠実(愚直?)にこの「第1稿」の楽譜を再現していたのでしょう。しかし、シーモア盤では、特にソリストのパートでかなり大胆な装飾が加えられていました。おそらく、これが実際に当時に演奏された形に近いものだったのでしょう。そして今回のエガー盤では、さらに、アリアのオブリガートの楽器がダ・カーポで最初と同じ楽譜を演奏するときに、びっくりするような装飾を施しているのですね。こうなると、これがさらに当時の習慣に近づいたのか、あるいはやりすぎなのかは、ちょっと判断が付かなくなってきますが、聴いていてエキサイティングなのは間違いありません。
ただ、エガーの場合は、ちょっと不思議なこともやっています。それは第1曲のリピエーノを、オルガンで演奏するだけで合唱に歌わせていないんですよね。こんなことをやっているのは、これが「世界初」のはずです。
それと、特徴的なのはとにかくテンポが速いということ。ですからトータルの演奏時間は144分38秒しかありません。これは間違いなく「史上最速」のはずです。
他のところでも書きましたが、国内販売にあたって代理店(ナクソス・ジャパン)が付けた「帯」の間違いの多さでも、これは「記録的」ではないでしょうか。もしかしたらそんな指摘への反論でしょうか、担当者とおぼしき人が「校正とは悪意のこもった間違いさがし」と、自らの失態を正当化するような発言をネットで漏らしていたのは、お粗末すぎる対応です。もうこれからは、ここの「帯」を信用する人はなくそす

CD Artwork © Academy of Ancient Music
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by jurassic_oyaji | 2015-05-05 21:58 | 合唱 | Comments(2)
Commented by tempus fugit at 2015-05-07 23:59 x
ビラー氏のCDには Premiere recording と書かれていますが、実際には、樋口隆一氏と明治学院バッハ・アカデミーが2002年に行ったマタイ初期稿のライブ演奏が、同じ年にCD化されています。またこの解説書には、第1曲のリピエーノについて「Organoと指示されており、オルガンだけで演奏された可能性がある」と樋口氏が書いています。ご参考まで。

ところで、エガー盤とシーモア盤は、聴き比べてどのような感想をお持ちでしょうか。どちらがおすすめですか?

Commented by jurassic_oyaji at 2015-05-08 08:43
tempus fugitさん、貴重な情報ありがとうございます。
樋口氏のヨハネの第2稿のCDは持っていますが、マタイも録音していたのですね。ただ、そのヨハネのライナーノーツでかなりいい加減なことを書かれていましたので、彼自身に対してはちょっと?なところがあります。しかし、リピエーノについての指摘には興味がありますね。スコアを入手してみようと思います。
シーモア盤は、合唱に問題がありそうですね。個人的にはエガーの合唱の方が好きです。