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QUANTZ/Solo Flute Music
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Eric Lamb(Fl)
PALADINO/PMR 0060




先日のCD自体は本当にしょうもないものだったのに、そこでフルートを吹いていたエリック・ラムという人の演奏にはちょっと惹かれるものがあったので、同時期に発売になった彼のソロ・アルバムも聴いてみることにしました。文字通りの「ソロ」、つまり、すべての曲がフルート1本で演奏されていて、そのほかの楽器は全然加わっていないというものです。
クヴァンツという人は、バロック時代の作曲家、というかフルーティストで、彼が著した「フルート奏法試論」という書物は、当時の演奏様式を知ろうとする人にとっては欠かせない資料となっています。つまり、当時の楽譜の情報は現代とは全く異なっていて、演奏家によって「楽譜に書かれていないこと」を付け加えられて、初めて作品として完結するようなものだったのです。ですから、その楽譜に書いてあることをどのように演奏するかを知る必要があるわけですが、それがこの本には事細かに書かれているのですね。クヴァンツにしてみれば当たり前のことを書いただけなのでしょうが、それが今となっては当時の「習慣」を知る貴重な文献となっているわけです。
クヴァンツは主にフルートのための膨大な作品を残していますが、それは現在では「QV」という作品番号によってまとめられています。これは、作品をジャンル別に整理したもので、「QV1」はフルート・ソナタ、「QV2」はトリオ・ソナタ、そして「QV3」がソロだけのための作品ということになっています(そのあとに「フルート協奏曲」、「管弦楽曲」、「アリアと歌」と続きます)。さらに、「QV3:1」はフルート1本、「QV3:2」はフルート2本、「QV3:3」はフルート3本のための作品です。それによると、フルート1本だけで演奏する作品は全部で24曲あるのだそうです。
このCDでは全部で23曲演奏されているので、その中から1曲だけカットしたのかな、と思うかもしれませんが、中にはQV番号が付けられていないものもあったり、番号が抜けていたりしますから、そんな単純なものではないようです。というのも、実はここで演奏されている曲は、今ではコペンハーゲンの王立図書館に保存されている「ファンタジーとプレリュード、8つのカプリスとその他の作品」というタイトルの「曲集」の中に収録されているものなのです。ラム自身のライナーノーツにでは「自筆稿」とありますね。実は、この楽譜の現物はこちらで見ることができますが、それはどうも「自筆稿」というよりは「写筆稿」といった方が正しいもののようでした。つまり、作曲するときに書いた楽譜(「自筆稿」とはそういうものです)を、何曲か集めて五線紙の表裏に写譜(コピー)したものなのですね。それを60ページ分ほど束ねて1冊にしたものが、さっきのタイトルの楽譜なのですが、そこにはクヴァンツの自作だけではなく、ほかの作曲家の作品も一緒に「コピー」されていたのですね。このCDの中のものでは、演奏時間の長い「サラバンドとドゥーブレ」はブロホヴィッツ、「メヌエットと変奏」はブラヴェの作品だというようなことが分かっています。
ラムは、S. Kotelというメーカーの木製頭部管の愛用者で、Youtubeで試演している様子を見ることが出来たりしますから、おそらくここでも頭部管だけ木製のものを使っているのではないでしょうか。なかなか柔らか味のある音色で、しかし音楽はあくまでアグレッシブに迫っています。「8つのカプリス」などは普通に出版譜が出ている有名なものですが、それはほとんど練習曲のように使われるもので、こういう形で演奏されるのを聴いたのは初めてでした。そこからは、クヴァンツの多岐にわたる音楽性をストレートに感じることができます。
何より驚いたのは、「カプリス1番」ではこんな半音階が使われていることです。

この時代の楽器ではこれはかなり難しかったはず。さらに「2番」になると、

こんな「重音」まで出てきますよ。

CD Artwork © Paladino Media GmbH
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by jurassic_oyaji | 2015-05-07 20:59 | フルート | Comments(0)