おやぢの部屋2
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「マタイ」の初期稿のスコアが手に入りました
 今日、ちょっとした用事があったので車で街まで行ってみたら、途中でこんなセットが出来てました。
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 そういえば、あさってからは「青葉まつり」ですね。いつの間にかそんな季節になっていたのでした。
 街での用事は、注文していた楽譜の受け取りでした。ふつうの楽譜屋さんで調べても扱っていなかったので、ヤマハからベーレンライターに注文してもらっていたものなんですよ。同じドイツの楽譜出版社でも、ブライトコプフではサイトから直接買うことができるのに、ベーレンライターだと、カートに入れて購入の手続きをしようとすると、ただ「代理店」を紹介してくれるだけなんですよね。買いたければ、そこを通して買ってくれ、というスタンスなんですね。なぜそんな面倒くさい(その結果、かなり高いものを買わされてしまいます)ことになっているのか、全くわかりません。でも、今回欲しかった楽譜はベーレンライターでしか手に入らないので、その「代理店」であるヤマハに発注をかけたのでした。
 それが、先週の金曜日でした。こんな中間業者が入っているのですから、そんなに早くは届かないのではと思っていたのに、今日になって「入荷しました」という連絡があったのですよ。早っ!
 あまりに早いので、今日受け取った時に「在庫があったんですか?」と聞いてみたら、ちゃんと取り寄せたそうなのです。「ベーレンライターとはよく取引があるので、すぐ入ってくるんです」ですって。これは使えますね。今まではアカデミアあたりで買っていたものも、ここで買えるかもしれません。そこで、同じベーレンライターの「モルダウ」のスコアを、その場で注文してしまいましたよ。
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 今日届いたのは、バッハの「マタイ受難曲」のスコアです。ただし、ハードカバーの布貼りという豪華な装丁、表紙には「BACH」としか書いてありません。これは、「新バッハ全集」の装丁のようですね。
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 中をあけるとやっとタイトルが書いてあります。「マタイ」だったらすでに安いスコアが出ているのに、なんでこんなものを、とお思いでしょうが、これは別バージョンのスコアなんですよ。そんなに需要はないので、ポケットスコアなんかは発行されていませんから、かなり高いけどこれを買うしかないんですね。
 最近、この「1727年稿」を使って録音されたCDが相次いで出たのですが、そのスコアの現物を見てみないことにはわからないようなことがたくさん出てきて、思い切って買うことにしました。やはり、その辺のいい加減な「帯職人」とは目指すものが全然違う「マニア」なのであれば、そのぐらいの投資は当然のことでしょう。
 さっきざっと見てみただけですが、すでにいろんなポイントが見つかりました。
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 左が今回の1727年稿、右が普通の1736年稿、第1コーラスには通奏低音がありません。というか、通奏低音は第2コーラスと「共有」しているのですね。こんなことは、録音を聴いただけでは絶対にわかりません。
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 もう一つ、これが一番確かめたかったことです。実は、この「リピエーノ」パートを「オルガンだけ」で演奏している録音があったので、その根拠を知りたかったのですよ。でも、これだったらオルガンだけというのはおかしいですね。この先のこのパートが出てきたところには、ちゃんと「歌詞」も付いていますし。あくまでソプラノがコラールを歌っているのと、「コラ・パルテ」でオルガンが伴奏する、ということを意味しているのだ、と解釈したいものです。エガーさんは何を勘違いしていたのでしょう。
by jurassic_oyaji | 2015-05-14 21:37 | 禁断 | Comments(8)
Commented by tempus fugit at 2015-05-15 00:56 x
先日のエガー盤についてのエントリにコメントした者です。あのあと、さらに興味を持って英語でウェブを検索してみたのですが、「マタイ初期稿ではオルガンだけしか指定されていなかった」「リピエーノのソプラノがついたのは1736年稿からだった」と書いている英文が複数見つかりました。

私はドイツ語はできないのでバッハの母国での情報はわかりませんが、少なくとも樋口氏やエガー以外にも、初期稿ではオルガンのみだったとの見方をしている人たちがいることになります。

「オルガンしか指定されていないが、"おお、神の子羊"固有のメロディなので、歌詞が歌われた可能性もある」と書いている英文もありました。ベーレンライターのスコアは、その見方を取り入れたという可能性はないのでしょうか。

先日のコメントに追記しようかと考えていたところ、この新しい記事を拝読しましたので、こちらに書かせていただきました。いずれにせよ、「エガーさんは何を勘違いしていたのでしょう」と単純に言い切れる話でもないように思ったしだいです。
Commented by jurassic_oyaji at 2015-05-15 09:57
興味あるご指摘、ありがとうございました。エガー盤のクレジットでは「ベーレンライター版を使用」と書いてありますが、実はベーレンライター版には校訂されて印刷したものと、自筆稿のファクシミリの2つのタイプがありますので、自筆稿にはそのような指定があるのかもしれませんね。ただ、原典版の常として、自筆稿にないものはそれなりの表記があるものですから、少なくとも「Soprano」の文字だけは自筆稿にあったのだと思いたいものです。
もしよろしかったら、お調べになった英文のサイトのURLをご教示願えないでしょうか。
Commented by jurassic_oyaji at 2015-05-15 11:39
1998年に発行されたBWVでは、BWV244bの編成にはリピエーノは入っていませんね。2004年にアンドレアス・グレックナーが校訂を完了するまでには、何か新しい資料が見つかったのか、グレックナーの単なる私見なのかは判断できませんね。「Soprano」という文字が斜体になっているのは、スコアには書いてないけれど、他の資料からの確信があって表記したのだと読み取れます。
後期の自筆稿がIMSLPで見ることが出来ますが、そこにはリピエーノのパートはなく、オルガンパートに赤字でコラールの旋律が書き加えられています。一方、今回のベーレンライターの楽譜では、フルートとオーボエもコラールの旋律を演奏するようになっています。
さきほどの英文サイトを探したら、WIKIPEDIAで早速見つかりました。しかし、ここで述べられているということで、逆に信憑性が疑われてしまいます。
Commented by cherubino at 2016-04-20 21:46 x
jurassic_oyaji様、はじめまして。貴ブログの詳しい内容、いつも大変参考にさせていただいています。たまたま私のところに、新バッハ全集のBWV244bのファクシミリがあり、第1曲のリピエーノについて見てみましたが、やはり「Organo」としかありませんでした。歌詞もついているのですが、これはT30〜T37までしかついておらず、筆跡も全体の筆記者とは違うようです。実は、IMSLPには、2015/11/29にマタイ初期稿のファクシミリが登録されており、この部分の画像も見ることができますので、ご確認いただけると思います。また情報交換できれば幸いです。
Commented by jurassic_oyaji at 2016-04-21 10:16
Cherubinoさま、コメントありがとうございました。
IMSLPを見てみましたが、初期稿のファクシミリは見つかりませんでした。削除されたのでしょうか?
やはり、斜字体の「Soprano[in ripieno]」は、校訂者が加えたものだったのですね。
おそらく、当時は装飾など楽譜に書かれていないことでも慣習的に加えて演奏されていたのでしょうから、ストイックに「自筆稿通り」に演奏することは、あまり意味がないのではないでしょうか。
Commented by cherubino at 2016-04-21 12:20 x
http://imslp.org/wiki/Matth%C3%A4uspassion,_BWV_244b_(Bach,_Johann_Sebastian)

早速のコメントありがとうございます!IMSLP「Matthäuspassion, BWV 244b」の上記アドレスです。出先からですので取り急ぎ。
Commented by jurassic_oyaji at 2016-04-21 20:49
見つかりました。BWV244とは別のところにあったんですね。
でも、これは注釈を見るとコピストによる複写のようですし、実際に最初のあたりのページは完全に別人の筆跡ですね。
Commented by cherubino at 2016-04-21 22:23 x
jurassic_oyaji様、たびたびのお返事ありがとうございます。もともと224bは自筆総譜、オリジナルパート譜としては残っておらず、1750年頃になって作られた筆写譜があるのみです。ベーレンライターから出たファクシミリ版(デュル校訂)では、バッハの娘婿で弟子のJohann Christoph Altnickol による筆写譜としていましたが、最近の研究はアルトニコルの弟子のJohann Christoph Farlauの手になるものと想定しています)。
>おそらく、当時は装飾など楽譜に書かれていないことでも慣習的に加えて演奏されていたのでしょうから、ストイックに「自筆稿通り」に演奏することは、あまり意味がないのではないでしょうか。
その点はまさにおっしゃるとおりです。リピエーノのパートがどう扱われたかについても総合的に判断する必要がありそうです。