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GERSHWIN/The Work for Solo Piano





Frank Braley(Pf)
HARMONIA MUNDI/HMC 901883



ガーシュインの伝記映画「アメリカ交響楽」をご覧になったことがありますか?黒田さんの母校ではありません(それは「学習院」)。彼が亡くなってから8年後の1945年に作られたこの映画、原題は「Rhapsody in Blue」というだけあって、その、殆ど彼の代表作とされる曲の初演の模様が、一つのハイライトになっていましたね。何しろ、実際にこの曲をガーシュインに依頼し、自らのオーケストラを指揮して初演を行ったポール・ホワイトマンが「ヒムセルフ」で出演しているのですから、リアリティがあります。ただ、その場面では、かなり大人数の「シンフォニー・オーケストラ」がステージに乗っていましたが、実は初演の時の編成はピアノソロにジャズのビッグバンドだったのですから、これは決して真実の姿を伝えるものではありません。ホワイトマン本人が出演しているからといって、だまされてはいけません。
いくらジャズのバンドであれ、この初演の時のスコアすらガーシュイン自身が書いたものではなく、あのグローフェによるものだというのは、よく知られていることです。そもそも彼はショービズの世界の売れっ子作曲家、ピアノの譜面は書けますが、「オーケストレーション」というちまちました仕事は、そちらの専門の人に任してしまえばそれで済むような立場にあった人なのです。これは、現代のショービズ界でも同じこと、あのヒットメーカー、アンドリュー・ロイド・ウェッバーも、デヴィッド・カレンという有能なオーケストレーターを抱えていれば、自らはそのようなスキルがなくても、自在に華麗なサウンドを作り上げることは出来るのです。「レクイエム」などという、紛れもない「クラシック」の曲を持っていながらロイド・ウェッバーが決してクラシックの作曲家と呼ばれることはないのと同様に、ジョージ・ガーシュインも生涯「クラシック」の作曲家ではありませんでした。もちろん、それは、作曲家本人がそのように望んでいたこととは全く別の次元の話です。
俊英フランク・ブラレイがこのガーシュイン・アルバムで見せてくれたものは、まさにそのような「非クラシック」の作曲家としてのガーシュインの姿でした。オープニングでいきなり聞こえてくる、彼の代表的なミュージカル「ポーギーとベス」の冒頭を飾る「ジャスボ・ブラウンのブルース」は、そんな「ショービズの世界へようこそ!」というブラレイからのメッセージなのかもしれません。そして、ガーシュイン自身によってピアノ・ソロに編曲された「ラプソディー・イン・ブルー」が続きます。これこそが、ホワイトマンやグローフェによって渋々まとわされた「クラシック」の衣をかなぐり捨てた、この曲の真の姿なのかもしれません。控えめにスイングするブラレイのピアノからは、そんな開放感が伝わってくるようです。
次のトラック、1932年に出版された「ソング・ブック」こそは、このアルバムのメインと言っても差し支えないでしょう。これは1918年にアル・ジョンソン(彼も映画には本人役で出演していましたね)によって歌われ、最初の大ヒットとなった「スワニー」を始めとした18曲のヒット・チューンのオンパレードです。もちろん、編曲はガーシュイン自身ですが、注目したいのはその中にあふれるファンタジー、元の曲をそのまま聴かせるのではなく、そこから自由に広がるアイディアが、いかにもスマートです。
後半には、ウィリアム・ドリーによって編曲された「パリのアメリカ人」(この曲をクラシックと思う人はいないでしょう)に続いて、「前奏曲」とか「即興曲」といったタイトルのピースが収められています。イタリア語の表情記号まで伴った、いかにも「クラシック」っぽいものですが、聞いてみれば「ソング」と何ら変わらないスタイルとテイスト、彼は、どこまで本気で「クラシック」の作曲家になりたがっていたのでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2005-08-01 20:46 | ピアノ | Comments(0)