おやぢの部屋2
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MUSICAL MOveMENTS
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Helle Høyer Vedel/
Aarhus Pigekor(Aarhus Girls Choir)
HÄNSSLER/CD 94.704




大好評だという「ザ・クワイア・プロジェクト」の第3弾です。「ワールド・クワイア・ゲームズ」というコンテストで「チャンピオン」になったアマチュアの合唱団が、そのご褒美としてこのレーベルからCDを出してもらえる、というプロジェクトですね。前の2団体のCDは、かなり売れたそうですね。ただ、彼らはそれぞれジャズやポップス、あるいはゴスペルといった要素を持っていた団体ですから、やはりこのようなコンテストでは、そんな「わかりやすさ」がポイントなのかな、と思っていたのですが、今回はまっとうなクラシック、しかもピチピチの「現代作曲家」の作品を歌っているのですから、まずは一安心。こういうところも、しっかり売れるといいですね。
その合唱団は「オーフス少女合唱団」というデンマークの合唱団です。首都コペンハーゲンに次ぐ大都市オーフスの音楽学校の生徒がメンバーとなっている合唱団で、その前身は1940年代から存在していましたが、2002年に現在の名前に変わってから、飛躍的にその実力が向上しています。それは、当時この音楽学校の教師だったヘレ・ホイアー・ヴェーゼルが、自ら生徒を引き抜いて新たに合唱団を編成したことに始まります。それ以来、この合唱団は世界中に演奏旅行に行ったり、多くのコンテストで入賞するなど大活躍、すでに何枚かのCDもリリースしています。
学生による合唱団で、16歳から23歳までという年齢制限があるようですから、当然入れ替わりがありメンバーは常に「若い」声を保つことが出来ます。この年齢は日本では高校生から大学生ということでしょうから、「少女合唱」というよりは「女声合唱」に変わりつつある微妙な段階です。このCDを聴いてみると、そのあたりの「無垢さ」と「大人っぽさ」という相反するファクターが入り混じった、絶妙のテイストを味わうことが出来ます。「ちょっと熟れはじめた青いリンゴ」みたいな(ちょっといやらしい?)。
今回のCDでは、主にデンマークの作曲家の作品が演奏されています。その筆頭があのニルセンです。こちらにも収録されていて混声合唱の編曲で歌われていた「Den
danske sang er en ung, blond pige(デンマークの歌は、若く美しい髪の娘)」が、女声合唱で歌われています。やはり「大人」が歌っていたものとは全然違う軽やかさが漂っていますね。
そして、このサイトでは有名なペア・ノアゴー(ヌアゴー)がこの合唱団のために作った「Swinging in the rain」と「Singing sand」という2曲が歌われます。この作曲家ならではのちょっと硬質な音楽が、彼女たちによってとてもチャーミングに演奏されています。
同じ「現代作曲家」でも、ジャズピアニストでもあるセーアン・ムラーの作品では、一味違う「スウィング感」が伴います。いずれも旧約聖書の「雅歌」をテキストにした「I am the rose of Sharon」と「Let my beloved come into his garden」では、それぞれスキャットによるオスティナートや、手拍子や打楽器のリズムが軽快な味を演出しています。「I am~」で歌われているメロディはどこかで聴いたことがあるのですが、なんだったのでしょう。
アンナ=マリ・カハラという、まるで日本人みたいなラスト・ネームの作曲家は、フィンランド人。彼女が作った「Ku nukkuu tuutussasi」という曲は、「ヨイク」が素材となった民族色の濃い音楽です。小さなお子さんは真似をしてはいけません(それは「よい子」)。さらに、本物の日本人である、合唱界では大変有名な松下耕の「ねんね根来の」も歌われています。もちろん歌詞は日本語ですが、全く日本語に聴こえないというのはご愛嬌。
特にソプラノ・パートが、ピュアな中にもとてもパワフルなものを秘めていますから、それを録音するのは至難の業です。ここでも、いたるところで頭打ちの歪みが感じられて、ちょっと不快な思いになることがあります。おそらく、ハイレゾのソースであれば、かなり改善出来ていたはず。

CD Artwork © hänssler CLASSIC in SCM-Verlag GmbH & Co. KG
by jurassic_oyaji | 2015-05-15 21:01 | 合唱 | Comments(0)