おやぢの部屋2
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Born to Be Mild
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Hille Perl(E.Gamba)
Lee Santana(E.Guit)
Marthe Perl(E.Gamba)
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ラトルの「マタイ」の映像で、とても印象的な姿を見せていた超美人ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、ヒレ・パールの最新のリーダー・アルバムです。このジャケットの写真もそうですが、その美貌からは年齢を超越したものが感じられたものですから、今回調べてみて彼女が1965年生まれだと分かった時には、軽いショックを受けてしまいました。50歳ですか・・・。
それよりショックだったのは、ここで共演しているマルテ・パールというガンビストは、彼女の娘さんだと知ったことです。写真ではまるで妹のように見えるというのに。
さらにサプライズは続きます。ここでもう一人プレーヤーとして参加しているリー・サンタナが、実はマルテの父親なんですって。彼はリュート奏者として公私ともにヒレ・パールのパートナーだったのですね。もちろん夫婦共演のアルバムもたくさんリリースされています。つまり、このアルバムでは「家族共演」が実現しているのですね。
ここでは、リー・サンタナがリュートではなくイーストマンのセミアコを演奏しているように(彼は若いころはギタリストとしてジャズやロックを演奏していました)、他の2人も「エレキ・ガンバ」を使っています。

この写真で分かるように、普通のガンバとは形が全く違った非対称形、もちろんケーブルを差し込む端子も付いています。こんな楽器があることも初めて知りました。これは「アルトラ・ガンバ」(「もう一つのガンバ」、ですね)という名前の楽器で、フランスの制作者フランソワ・ダンジェの作ったものです。ダンジェはガンバだけではなく、ヴィオール全般を制作していますが、このような「電気楽器」にまで手を伸ばしていたのです。なんでも「アルトラ・ガンバ」には「クラシック」、「ジャズ」、「ロック」の3タイプのモデルがあるそうで、「ロック」などはエレキ・ヴァイオリンのようにボディがスケルトンになっています。「古楽器」の世界は、ここまで来ているのですね。

そんな、16世紀以前に誕生した楽器が、現代のテクノロジーと合体して繰り広げる音楽は、いったいどんなものなのか、まるで想像が出来ません。とにかく聴いてみるしかないのですが、それはもう時代もジャンルも超えたとてつもなく広大な世界を見せてくれるものでした。基本は、ガンバ本来のレパートリーであるルネサンス・バロック期の作品を、ギターも交えてスタイリッシュに迫る、という、まあ言ってみれば「想定内」のものなのですが、次第にそのガンバが「エレキ」の側面を強調し始めると、聴く方もエキサイトしてきます。トビアス・ヒュームという17世紀初頭のイギリスの作曲家の「Hit in the Middle」と「Touch Me Sweetly」という曲では、思い切りエフェクター(ヒレは、「スティーヴ・ヴァイのような」と言っています)をかけて、音色からアタックまで、全く別の楽器のような音を出しています。2曲目では、普通のガンバでも珍しいピチカートまで披露してくれていますよ。
そんなエフェクターの加え方は、この中で最も長い演奏時間の「Zeus: Jupiter Optimus Maximus」というオリジナルは18世紀のフランスで作られた曲で最高潮に達します。そのギンギンのディストーションは、まさに「メタル」ではありませんか。こんなのを聴いてしまうと、いずれは「メタル・ガンバ」というカテゴリーが現れる予感。
リー・サンタナは作曲家としても活躍していて、彼の作品も3曲演奏されています。これらは、それぞれある「詩」にインスパイアされて作られたもので、ヒレはその詩を朗読しながら演奏しています。インプロヴィゼーションの要素もかなり見受けられるような、ちょっとシュールな作品たち、さっきのメタルとは対極の、未来のガンバの姿が見えてきそうな気がしませんか?
かと思えば、トルコ音楽とのコラボ、などというものすごいものも登場します。これなどは、「ワールド・ミュージック」としてのガンバ、ですね。

CD Artwork © Sony Music Entertainment Germany GmbH
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by jurassic_oyaji | 2015-05-17 20:11 | ポップス | Comments(0)