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BACH & SANDSTRÖM/Motetten
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Stephan Doormann/
Kammerchor Hannover
La Festa Musicale
RONDEAU/ROP6105




スウェーデンを代表する作曲家、スヴェン=ダーヴィド・サンドストレムの作品は、特に合唱曲が日本では人気があるようです。一見「現代風」の聴こえ方がするものの、最終的には古典的な和声と美しいメロディでまとめられる、という点が、やはり好かれる要因なのでしょう。
サンドストレムの最近の関心事はバッハを下敷きにした合唱曲。昨年、2014年にはついに「マタイ受難曲」を完成させて、「バッハにちなんだ」作品シリーズは、一つの節目を迎えたのではないでしょうか。
そんなシリーズの一環として、もちろんBWVでは225から230にあたる「6つのモテット」もすでに完成しています。作られた時期は、「Singet dem Herrn ein neues Lied(BWV225)」と「Lobet den Herrn, alle Heiden(BWV230)」が2003年、「Komm, Jesu, komm(BWV229」が2005年、「Jesu meine Freude(BWV227)」と「Fürchte dich nicht, ich bin bei dir(BWV228)」が2007年、そして「Der Geist hilft unser Schwachheit auf」が2008年です。これらは、バッハが用いたテキストとモティーフをそのまま使って、新たに彼なりの作品に仕上げるという、いつものやり方で作られています。
2007年に指揮者のシュテファン・ドールマンによって作られた「ハノーファー室内合唱団」が、このサンドストレムの「モテット」を録音した時には、その「下敷き」となったバッハの作品をカップリングにしていました。つまり、BWV225, 227, 228の3曲はバッハの作品、それを残りの3曲のサンドストレム版でサンドしたというラインナップです。なぜ、「同じ」曲を、並べて演奏しなかったのでしょうね。あるいは、6曲全部聴かせろ、とか。
そんな、ちょっと割り切れない気持ちで聴きはじめると、いきなりサンドストレムの「Komm, Jesu, komm」で、とても硬質のクラスターが聴こえてきたので、何かホッとさせられる思いでした。ア・カペラならではのクラスター、最初はまるで水彩画のように、半分和声的な要素も残した「淡い」ものだったのが、次第に厚ぼったく塗りたくった油絵のような「ガチ」のクラスターに変わっていくさまは、とてもエキサイティングです。これはまさに21世紀ならではの語法。
「Der Geist hilft unser Schwachheit auf」になると、しっとりしたもろヒーリング・テイストのアリアが聴こえてきます。このあたりが、サンドストレムの最大の魅力になるのでしょうか。「Lobet den Herrn」では、やはり最初は硬質な短いフレーズの応酬で曲が始まりますが、次第にハーモニーを大切にしたホモフォニーの美しい部分へと変わっていくあたりがスリリング。その中でも、時折横切るクラスターのアクセントがたまりません。最後は「Halleluja!」というポリフォニックな部分で締めくくられます。
ところが、この合唱団は細かいところのスキルがいまいちのようで、このメリスマのピッチときたらかなりいい加減、いくら「現代曲」でも、そういうところをきちんと押さえないことには、ただの「冗談」で終わってしまいます。
そんな合唱団ですから、残りのバッハのモテットは全然物足りない演奏です。まるで上澄みだけを掬ってきたような、とてもきれいなのだけれどまるで中身のないサウンドで歌われるバッハは、いかにも底の浅い表面的な仕上がりに終始しています。ポリフォニックな部分などは退屈そのもの、ただ音符を並べただけでは、決して音楽にはなりえないという、見本のようなものです。
実は、サンドストレムのモテットは、こちらでも聴いていました。そこに収録されていたのは「Lobet den Herrn」と「Singet dem Herrn」の2曲です。やはり、合唱団の格としてはスウェーデン放送合唱団の方がいくらか上のようで、先ほどのメリスマも安心して聴いていられました。そして、今回のアルバムにはバッハ版しか入っていない「Singet dem Herrn」のサンドストレム版を聴きなおしてみると、最初に「本家」から引用したメリスマから、さらに難易度を上げたものが現れます。このハノーファーの合唱団では、こんなのはとても歌えなかったから録音しなかったのではと、つい不謹慎な思いが脳裏をよぎります。

CD Artwork © Rondeau Production GmbH
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by jurassic_oyaji | 2015-05-19 23:15 | 合唱 | Comments(0)