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MESSIAEN/Des Canyons aux Étoiles
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Tzimon Barto(Pf), John Ryan(Hn)
Andrew Barclay(Xylorimba), Erika Öhman(Glo)
Christoph Eschenbach/
London Philharmonic Orchestra
LPO/LPO-0083




ロンドン・フィルのレーベルのジャケットを飾るのは、このオーケストラのロゴにも使われている「★」のマーク。だからというわけではありませんが、今回はメシアンの「渓谷から星たちへ...」の最新録音です。地味な曲ながら、昔から録音には恵まれていましたね。
この作品は「アメリカ」にモティーフを求めたものとされています。メシアンとアメリカとは、なんというミスマッチ、という気がしませんか?もちろん、これはメシアンが「委嘱」を受けたから作られたもの、1976年にアメリカが「建国200年」を迎えるにあたって、ニューヨークの音楽界のお金持ちから作曲を依頼されたものです。メシアンは、アメリカの原風景である「渓谷」に目を付け、実際にアメリカのユタ州にある国立公園を訪れてその自然に圧倒され、この曲を作れという声を聴いたのだそうです(それは「警告」)。
作曲は1974年に完成し、その年に初演が行われ、世界中で絶賛を博しました。そして、1975年7月にはマリウス・コンスタンの指揮、イヴォンヌ・ロリオのピアノで初めてERATOに録音されました。その国内盤のLPが手元にありますが、そのライナーノーツでは、「メシアンの最新作」を初めて紹介する喜びが、興奮気味に書き連ねられています。そういう時代だったのですね。ただ、まだまだ情報不足の面は否めず、この中で使われている珍しい楽器の紹介もおそらくそのライターさん(当時の「現代音楽」のオーソリティ)は見たことはなかったのでしょう、「エオリフォーン(風力による楽器)」とか「ジェオフォーン(砂による楽器)」などと、とんでもないことがかかれています。「砂による楽器」なんて、いったいどんなものか興味がありますね。もちろん、現在ではそんなものはすぐネットで検索して現物の写真を見ることが出来ますから、今のライターさんが書くライナーにはそんなお粗末な間違いはあり得ません。

エオリフォーン(いわゆる「ウィンド・マシーン」)


ジェオフォーン(砂ではなく、パチンコ玉みたいなものを転がします)

ま、ネットを信用し過ぎて墓穴を掘る〇クソク・ジャパンのようなところもありますがね。

さらに、現在ではそのネットでこの曲が実際に演奏しているところまで見ることが出来ます。ご覧のように、編成が意外と小さいことに驚かされます。確かなデータによると、オーケストラの人数は41人で間に合うことになります。弦楽器が全部で13人しかいないのが、その最大の要因です。もう一つのいい加減なインフォを作っている〇MVのサイトにはこんな写真が載っていますから、すっかり騙されてしまうじゃないですか。

したがって、おそらく、コンスタン以後6つ目となる今回のエッシェンバッハの録音を聴くときには、初めてそんな特殊な編成を念頭に置いてそのサウンドをチェックできるようになりました。確かに、メシアンならではのティンパニやハープといった、普通のオーケストラでは定番の楽器を欠くオーケストレーションは、まずは打楽器のインパクトに圧倒されますが、この「少ない」弦楽器が妖艶に迫っているさまこそが、この作品に独特の味を与えていることに気づきます。
例えば、8曲目の「よみがえりしものとアルデバランの歌」という、ダ・カーポ・アル・フィーネ+コーダという形をとる瞑想的な曲では、そのビブラートたっぷりの弦楽器がベースとなったサウンドが、まるでオンド・マルトノのように聴こえてきます。
この曲はほとんど「トゥーランガリラ交響曲」の別バージョンであるかのような印象を与えられるように、この作品全体が壮大な「セルフ・パロディ」であることは明白ですが、それでも10曲目の「モリツグミ」で使われている「ド・ソ・ミ・ド」というシンプルそのもののモティーフには、確かに「アメリカ」のテイストが感じられます。こんなアホみたいな音列にも、彼にしかできない和声で彩ることで「メシアン」が出来上がるという、皮肉のようなものを感じるのは、間違ってますか?

CD Artwork © London Philharmonic Orchestra Ltd
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by jurassic_oyaji | 2015-05-21 21:06 | 現代音楽 | Comments(0)