おやぢの部屋2
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Sinkovsky Plays & Sings Vivaldii
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Dmitry Sinkovsky(Vn, CT, Conductor)
La Voce Strumentale
NAÏVE/OP 30559




このレーベルの「ヴィヴァルディ・エディション」にはすでにソリストとして登場していロシアのヴァイオリン奏者ドミトリー・シンコフスキーの、「ファースト・ソロ・アルバム」です。共演は、2011年に彼が創設した「ラ・ヴォーチェ・ストゥルメンターレ」、ここでは、シンコフスキーはアルバムタイトルの通りヴィヴァルディを「演奏」した上に「歌って」もいます。そう、この方は卓越したヴァイオリニストで指揮者であると同時に、「カウンターテナー」として「歌」のジャンルでも活躍しているのですね。彼が「カウンターテナー」を目指したのは、ヴァイオリニストとしてある程度のキャリアを積んだのちの2007年のことですから、こちらのカテゴリーではまだまだ「駆け出し」です。
彼の実年齢は正確には分かりませんが、このジャケットの写真を見る限りは「ハゲのヘンタイおやじ」という感じがしてしまいます。ところが、ブックレットのページをめくると・・・

ロン毛のなかなかのイケメンが現れます。このギャップはなかなかのもの。
そんな「ギャップ」のようなかなりショッキングな演奏を、ここでシンコフスキーは披露してくれています。それは、誰しもが「ついにここまできたか」という感慨を持ってしまうほどのものです。そのベースとなっているのが、通奏低音の編成。ふつうは低音楽器のチェロやコントラバスにチェンバロ、それにオマケでリュートあたりが加わっていれば十分に「変わった」ものと思えますが、ここではチェンバロがなんと2台、そしてリュートだけでなくバロック・ハープまでが参加するというものすごさです。
もちろん、この低音チームは全員でガチに迫れば、とてつもない迫力と、時にはすさまじいまでのビート感までもたらしてくれますが、同時に楽器の組み合わせによって思いもかけないような音色が生まれてくるのが魅力となっています。特にバロック・ハープがここぞというところで「ポロロン」と甘いフレーズを入れるのが、とってもセクシー。
そんな低音に乗って、あまりに有名であるがゆえにちょっと食傷気味の「四季」(なんせ「♪日清麺職人~」ですからね)が、とても新鮮なものに聴こえます。それはおそらく、シンコフスキーがそれぞれの曲の3つの楽章をきっちりとキャラクタライズして、そのプランに沿って思い切りやりたいことをやった結果もたらさらたものなのでしょう。第1楽章は言ってみれば「トッカータ」とか「ファンタジア」といった感じ、様々な楽想が脈絡なく出没して一時も油断が出来ないという、ハチャメチャな世界が繰り広げられます。第2楽章は一転して、しっとりしたアリア、と思いきや、そのメロディには誰も思いつかないような過激な装飾が施されています。ほんと、この装飾のセンスは「バロック」を超えて「アヴァン・ギャルド」ですらあります。そして、第3楽章は、低音を思い切りブーストさせた、ほとんど「メタル」と変わらないほどのエネルギッシュなビートの嵐です。なんたって、ソロ・ヴァイオリンが「シャウト」しているのですからね。
それだけで驚いていてはいけません。「夏」と「秋」の間には、「Cessate, omai cessate, rimembranze crudeli(去れ、むごい思い出よ)」というソロ・カンタータが演奏されています。もちろんアルト・ソロはシンコフスキーです。いやあ、彼の声はヴァイオリニストにしておくにはもったいないほどの素晴らしさですね。ファルセットであることを感じさせないほどパワフルで表情豊かな声には、もう感服です。1曲目のアリアにはヴァイオリンのオブリガートが付いていますが、それも彼が演奏しているのでしょうね。それこそ、クリストファー・クロスが歌いながらソロ・ギターを弾く、みたいな感じです。2曲目のアリアのコロラトゥーラなどは、「本職」顔負け、すごすぎます。もはや、その辺のへなちょこなカウンターテナーには、すごすごと引きさがっていただくしかありません。

CD Artwork © Naïve
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by jurassic_oyaji | 2015-06-02 22:54 | ヴァイオリン | Comments(0)