おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
BEETHOVEN/Les 9 Symphonies
c0039487_21243585.jpg
Gré Brouwenstijn(Sop), Kerstin Meyer(Alt)
Nicolai Gedda(Ten), Frederick Guthrie(Bas)
Chœurs de la Cathédrale St. Hedwige de Berlin
André Cluytens/
Orchestre Philharmonique de Berlin
TOWER RECORDS/TDSA-1/5(hybrid SACD)




LP時代の名盤の復刻を、レーベルとの共同作業で進めているタワーレコードが、ついにSACDを出してくれました。今回リリースされたのは、今ではWARNERと呼ばれるようになってしまったかつてのEMIの中の、フランスの「パテ・マルコニ」とドイツの「エレクトローラ」が共同して制作にあたった、アンドレ・クリュイタンス指揮のベルリン・フィルによる録音です。プロデューサーがパテ・マルコ二のルネ・シャラン、エンジニアがエレクトローラのホルスト・リントナーという布陣ですね。もちろん、録音会場はカラヤンとこのオーケストラのEMI時代のホームグラウンド、ベルリンのグリューネヴァルト教会です。
クリュイタンスといえば、なんといってもかつての「暮らしの手帖」で1963年から始まった「レコードの商品テスト」の第1回目で、最高位を獲得したレコードの指揮者、という印象が強く残っています。その時のテーマは「運命/未完成」。今では考えられないようなこんなカップリングのレコードが、世の中で一番人気があった時代です。もちろん、この2曲は録音年代も違いますし、最初にEMIから出たときにはそれぞれ別のアルバムだったものを、日本盤ではこんなカップリングで発売したのですね。ここで、録音担当の菅野沖彦さんは、特に録音が素晴らしいと、高得点を与えていましたね。
その「未完成」の方も、今回のシリーズの中に入っていますが、聴いてみたのはベートーヴェンの9つの交響曲だけの5枚組のボックスです。
ベルリン・フィルが最初に一人の指揮者とスタジオ録音で作ったベートーヴェン全集として有名なこのクリュイタンス盤は、ステレオ録音が実用化されたばかりの1957年12月に始まり、1958年3月、1958年12月、1959年4月-5月、1960年3月という5つの時期のセッションを経て完成されました。その間には、首席フルート奏者が交代していることが注目されます。フルトヴェングラーの時代からそのポストにあったのはオーレル・ニコレですが、彼は1959年に退団して、1960年からはカールハインツ・ツェラーがそれを引き継いだ、と言われています。確かに、この中で1957年と1958年に録音された1、3、5、8、9番は間違いなくニコレの音ですし、1960年の7、8番ではツェラーの音が聴こえてきます。ニコレはあくまで格調高く芯のある音、「9番」では神々しいほどの演奏を聞かせてくれています。それに対してツェラーは同じく強靭な音ですが、そこには多少砕けた味わいも感じられます。問題はまさにニコレが退団したとされる1959年の録音分です。4月に録音された2番はほぼ間違いなくニコレなのですが、5月に録音された4番は、ちょっとニコレではありえないようなユルさがあちこちで見られます。それにしても、フルート奏者一人のせいで、オーケストラ全体の味が変わってしまうのですから、すごいものです。もちろん、この10年後には、もっとチャーミングなフルーティストが入団して、このオーケストラの音色をガラッと変えてしまうのですが。
これらの音源は、マスターテープから24/96でPCMにトランスファーされたデータを、あの杉本一家さんがSACDとCDにマスタリングを行ったものです。当然のことですが、それぞれのレイヤーによって別々のマスタリングが施されています。SACDではそのままDSDに変換すればいいのでしょうが、CDでは多少ハイを上げて、SACDに迫ろうという「小細工」が必要なのでしょう。
SACDで聴いてみると、1957年に録音された「9番」などは、さすがにテープの劣化がかなり進んでいて、ドロップアウトは数知れず、さらに第4楽章の後半では音声データそのものがかなり劣化している状態がありありとわかります(烈火のように)。しかし、1960年のものになると、弦楽器の密度が高まり、細やかな肌触りまでちょっと前のデジタル録音ではとてもかなわなかったような繊細さで音楽を再現してくれています。

SACD Artwork © Warner Music Japan Inc.
[PR]
by jurassic_oyaji | 2015-06-07 21:26 | オーケストラ | Comments(0)