おやぢの部屋2
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ROCHBERG/Complete Flute Music ・ 1
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Cristina Jennings(Fl)
Lura Johnson(Pf)
June Han(Hp)
NAXOS/8.559776




聞いたこともない名前の作曲家の作品が簡単に聴けるのが、NAXOSのいいところです。ま、ほとんどは「クズ同然」ですが、それなりに未知のものに対する好奇心を満たしてくれる魅力には勝てません。
今回のジョージ・ロックバーグという、1918年に生まれて2005年に亡くなった、まさに「20世紀」をまるまる生きたアメリカの作曲家が果たして「クズ」なのかどうかは、聴いてみるまで分かりません。この世代の作曲家の常として、スタート地点が「無調」や「セリエル」だったというのはお約束、しかし彼の場合は1964年にまだ10代だった息子を亡くしたことにより、そのような技法をきっぱり捨てて、「ネオ・バロック」や「ロマンティック」の方向に転向するというのですから、なんともわかりやすい「変節」ぶりです。
ですから、このアルバムに収められているすべて1970年以降に作られた「フルート作品」では当然そのような作風に染まっていると思ってしまいますが、実はそうではなく、かなり「前衛的」なテイストが強い「ハード」な作風が感じられてしまいました。なかなか一筋縄ではいかないところが、「現代作曲家」のおもしろいところです。
タイトルには「フルート作品全集第1巻」とありますが、この作曲家がフルートのために作った作品は「ほんの一握り」しかないそうなので、あと1枚ぐらいで「全集」が完結してしまうのでしょうか。そもそも、今回のアルバムのメインの「Caprice Variations」(1970年)にしても、オリジナルはヴァイオリン・ソロのために作られたものでした。これは、有名なパガニーニの、やはりヴァイオリン・ソロのための「24のカプリース」と同じテーマを使って作られた51曲からなる変奏曲から、ここでフルートを演奏しているクリスティーナ・ジェニングスが21曲を選んで2013年にフルート・ソロのために編曲したものなのです。彼女がそこまでしてロックバーグの作品を演奏したかったのにはわけがあります。彼女の父親のアンドリュー・ジェニングスは、ロックバードが多くの弦楽四重奏曲を献呈した「コンコード弦楽四重奏団」の第2ヴァイオリン奏者だったのです。彼の演奏によるヴァイオリン版の「Caprice Variations」も全曲Youtubeで見ることができるぐらいですから、まさにロックバーグの音楽は彼女の「少女時代のサウンドトラック」だったのですね。
この作品は、パガニーニのテーマだけではなく、いくつかの曲は有名な作曲家のある作品を下敷きにして作られているという、手の込んだものです。例えば、フルート版では「10番」になっているオリジナルでは「21番」にあたる曲などは、「ベートーヴェンの交響曲第7番の終楽章風パガニーニ」になっています。そのほかにもマーラーやバルトーク、さらにはシェーンベルクと、「元ネタ」を知っていればなかなか笑えます。最後の曲はパガニーニのオリジナルをそのまま、というのが「オチ」ですね。
ジェニングスの編曲は、時折重音、ホイッスルトーン、キータッチ、フラッタータンギングなどの「現代奏法」を織り交ぜて、おそらくヴァイオリンよりも高い難易度が要求されているのではないでしょうか。それを、芯のあるぶっとい音でサラッと吹き上げているところが、素敵です。
そのほかに、「浮世絵」というタイトルの作品が2曲演奏されています。フルートとピアノのための「浮世絵3」(1982年)は、「Between Two Worlds」というサブタイトルが付いていて、ところどころに「日本風」の五音階が出てくることで、その意図が明確になります。ただ、全体的には「無調」のテイストも満載の暗~い曲、というイメージです。
もう一つの「浮世絵2」は、フルートとハープのための「Slow Fires of Autumn」(1979年)です。こちらはもろ「ジャパニーズ」なテイストで、まるで尺八と筝の合奏のように聴こえます。なんたって、五音階どころか、最後は「五木の子守唄」ですからね。このメロディは、いつ聴いても和みます。
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by jurassic_oyaji | 2015-06-09 23:32 | フルート | Comments(0)