おやぢの部屋2
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FRANCE-ESPAGNE
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François-Xavier Roth/
Les Siècles
ACTES SUD/ASM 17




ロトとル・シエクルの最新アルバムは、フランスの作曲家によるスペイン音楽というものでした。この2つの国はお隣なのに民族性は全く異なっていて、当然音楽の趣味も別物です。そんな「異国情緒」を取り入れるのは19世紀末のフランスではある種の流行だったようですね。
いつもの通り、ロトたちのスタンスは演奏された当時の楽器を使用するというもの、もちろん弦楽器ではガット弦が使われています。ブックレットのメンバー表によると、その編成は12.10.8.7.5、これは、現在のオーケストラがこのような作品を演奏するときの編成よりかなり少なめです。
最初の曲は、マスネの「狂詩曲『スペイン』」です。この曲こそは、例えば16型の大編成の弦楽器による「スペクタクル」な録音が巷にあふれていますね。そういうものを聴きなれた耳にはどのように感じられるのでしょう。しかし予想に反して、その音は全く別の意味での「スペクタクル」なものでした。それは、ありがちな圧倒的なパワーで聴く者を興奮させるというものではなく、もっと細かいポイントでの魅力的な音が至る所から伝わってきて、その集積が結果的にとてつもないインパクトを与える、という、とても「賢い」やり方で迫ってくるものだったのです。
まずは、最初の弦楽器のピチカートだけで、すでにその音の虜になってしまいます。それは、まさにガット弦ならではの甘い音色と、温かい発音を持っていました。それがアルコになると、なんとも繊細なテクスチャーで耳元をくすぐります。金管楽器も、最も大切にしているのは音色であることを意識していることが明確に伝わってくる吹き方、こういうのであれば、このサイズの弦楽器でもマスクされてしまうことは決してありません。木管楽器も見事なアンサンブルで的確にアクセントを演出しています。もちろん、今では絶滅した「バソン」の鄙びた音も、ここでは健在です。そして、最も驚かされたのがハープの不思議な存在感です。楽器は初期のエラール、もちろんダブルアクションで、メカニック的には現在のものと変わりがありませんが、そのちょっと舌足らずな優雅さはこの頃の楽器にしか備わっていないものです。
そして、それぞれのパートに生き生きとしたスポットライトをあて、彼らが自発的に音楽を作る手助けをしているのが、指揮者のロトです。その結果、オーケストラ全体はロトの思い通りの方向に向かって動き出すのですから、これほど自然なものも有りません。かくして、スペインのエキゾティシズムとフランスのエスプリが融合した素晴らしい音楽が出来上がりました。
続く、シャブリエの「『ル・シッド』からのバレエ組曲」は、スペインが舞台のオペラから、グランド・オペラならではのバレエのシーンに演奏されるスペインの舞曲だけを集めたものです。名前だけは聞いたことがあってもなかなか聴く機会のない曲ですが、こんな風に情熱的に演奏されればいっぺんで好きになってしまいます。4曲目の「オーバード」冒頭のピッコロの軽やかなイントロは、まるで「スーダラ節」のように聴こえますし、6曲目の「マドレーヌ」のフルートとコール・アングレのソロの掛け合いは、心に染みます。
もう少し先のラヴェルやドビュッシーの時代になると、スペインとの関わり方は微妙に変わってきているようです。そんな中で、「道化師の朝の歌」の最初の喧騒が終わってバソンのソロのあとに広がる不思議なオーケストレーションの世界(弦楽器のハーモニクスの中をさまよう金属打楽器たち)では、またもやロトが作り上げたまるで夢のような極上のサウンドに打ちのめされることになります。ドビュッシーの「イベリア」の最後の曲で現れる鐘の音も、別の世界から聴こえてくるもののよう。
全てがコンサートのライブ録音で、それぞれ会場が異なっています。ただ、どの曲をどこで演奏したかというクレジットがないのは不親切。

CD Artwork © Actes Sud
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by jurassic_oyaji | 2015-06-20 20:33 | オーケストラ | Comments(0)