おやぢの部屋2
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TCHAIKOVSKY/Ballet Suites
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小澤征爾/
Orchestre de Paris
DECCA/UCGD-9043(single layer SACD)




SACDでも、ハイブリッド・タイプのものは数多くリリースされていますが、そのCDレイヤーを省いた「シングル・レイヤーSACD」は、一時日本のメーカーから集中的にかなり高額な価格設定で発売されていたものの、このところぱったりリリースが止まっていました。調べてみたら最後にこのタイプのSACDが出たのは2013年1月でした。もはや、見限られたのかな、と思っていたら、最近ユニバーサルからバーンスタインと小澤征爾のアナログ時代のアイテムがまとめてシングル・レイヤーでリリースされました。小澤の場合は、先月がDGレーベル、今月がPHILIPSレーベルに録音していた分です。
もちろん、現在ではPHILIPSというレーベルは消滅していて、カタログはDECCAに吸収されていますから、今回のものにはDECCAのロゴが入っていますが、初出当時のLPのジャケットと同じ装丁でしたので、LP時代に買っていろいろな意味でショッキングだった、パリ管弦楽団を使って録音したチャイコフスキーのバレエ組曲集を聴いてみることにしました。このアルバムは「くるみ割り人形」と「眠れる森の美女」のカップリングですが、この録音が行われた1974年2月25日から27日までのセッションでは、「悲愴」も録音されていました。実は、同じ2月の11日と13日には、小澤の最初のPHILIPSへの録音となるニュー・フィルハーモニア管弦楽団とのベートーヴェンの「第9」のセッションが設けられていました。このあたりの、まさに世界中のオーケストラを相手にさまざまなレーベルに活発に録音を行っていた小澤のある意味「絶頂期」の活動は、今回のSACDに掲載されたオヤマダアツシさん(かつて「山尾敦史」という名前で知られていたライター。おや、まだやってたんだ)のライナーノーツに詳述されています。
このLPで「くるみ割り人形」を聴いたときにまず驚いたのが、「小さな序曲」のあまりに遅いテンポです。それはまるで冗談のように聴こえてきましたね。今聴き返してみても、その印象は変わりません。ただ、おそらく小澤はここではかなりきっちりとした音楽を作ろうとしていたのでは、という気はします。単なる名曲集のようなもの(おそらく、レーベルはそれを望んでいたのでしょうが)には絶対したくない、といった気概があったのかもしれませんね。次の「行進曲」でも、それまで聴いてきたものとは違った、ちょっとした違和感を誘うところがありました。それは、冒頭のトランペットのファンファーレ「ちゃっちゃかちゃちゃっちゃっちゃっちゃっちゃー」の最後の「ちゃー」。その音は、びっくりするほど唐突に大きな音で吹かれていたのですよ。あとで楽譜を見てみたら、確かにそこにはアクセントの記号が付いていましたが、他の人はここまではっきり目立たせてはいません。というか、いくら楽譜に指示があったと言っても、ここまでやるのは明らかなやり過ぎ、マジメだったんでしょうね。
「眠りの森の美女」の方でもそんな「くそマジメ」な面が現れているのが、最後の「ワルツ」です。序奏が終わって出てくるメインテーマのメロディ・ラインが、なんとも角ばっているんですよね。これも確かに楽譜にスラーは付いていませんが、「cantabile」とは書いてあるので、もっと甘~く歌ってほしかったものです。
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LP当時でも、これは「音の良いレコード」として定評がありました。実は、2002年にPHILIPSのエンジニアによるレコーディング・チームPOLYHYMNIAによって、「くるみ割り人形」だけは「悲愴」とのカップリングでハイブリッドSACD(PENTATONE/PTC 5186 107)になっていました。それを、今回のSACDと比べてみると、同じマスターとは思えないほどの違いがありました。PENTATONEの音は、まぎれもないPHILIPSサウンド、繊細な中にも、必要な楽器がしっかりと主張しているものですが、イギリスのClassic Soundというところでマスタリングが行われた今回のユニバーサル盤は、情報量は圧倒的に多いにもかかわらず、それはただやかましいだけで美しくない音でした。

SACD Artwork © Decca Music Group Limited
by jurassic_oyaji | 2015-06-26 20:30 | オーケストラ | Comments(0)