おやぢの部屋2
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PROKOVIEV/The Fiery Angel
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Galina Gorchakova(Renata)
Sergei Leiferkus(Ruprecht)
The St. Petersburg Mariinsky Acrobatic Troupe
David Freeman(Dir)
Valéry Gergiev/
Chorus and Orchestra of the Mariinsky Theatre
ARTHAUS/100 391(DVD)




プロコフィエフの亡命時代に作られた「炎の天使」は、ヴァレリー・ブリューソフのオカルト小説をもとにプロコフィエフ自身が台本を書いた、何ともアヴァン・ギャルドなオペラです。後に彼はソ連に戻ることになるのですが、当時の国家体制化では当然こんなオペラが上演されるはずもなく、結局全曲が初めてヴェネツィアのフェニーチェ劇場で舞台上演されたのは彼の死後、1955年のことでした。
晴れて作曲家の祖国(とは言っても、彼は厳密にはウクライナの生まれですが)での上演が敢行されたのは、ソ連が崩壊した後の1992年のことでした。それは、サンクト・ペテルブルクのキーロフ・オペラと、ロンドンのロイヤル・オペラ(コヴェントガーデン)との共同制作、デヴィッド・フリーマンの演出、ヴァレリー・ゲルギエフの指揮での上演です。翌1993年のキーロフ・オペラの来日公演の際には、この「炎の天使」がレパートリーに入っており、もちろんそれが舞台上演としては日本初演となりました(その数か月前に、大野和士指揮の東京フィルが、コンサート形式の上演を行っています)。
翌1993年に、あの伝説的な映像監督ブライアン・ラージによってマリインスキー劇場で収録されたものが、このDVDの元となった映像です。それは、かつてバイロイトで行われたように、客席には観客がいない状態で撮影が行われていて、ラージならではの緻密なカットが存分に味わえるものでした。当初はPHILIPSからCDとレーザー・ディスクでリリースされ、その刺激的な映像には多くの人が衝撃を受けていました。当時のジャケットでは、なんとヤバそうな部分に「ぼかし」が入っていますね。

おそらく、このオペラの映像ソフトはこれしかないはずです。もちろんレーザー・ディスクなどはもはや廃盤になっていますから、DVDあるいはBDによるリイシューは長く待たれていたはずです。そんな愛好家の願いが、ARTHAUSからDVDという形でリリースされたことによって叶う日が来ました。オリジナルが画面比4:3の非HDですからBDにする意味はないので、これで十分です。ただ、日本語の字幕がないのはちょっと辛いかもしれませんね。
ジャケットもこんなにおとなしいものに変わっています。もしかしたら、タイトルの「天使」という言葉から、これが天使なのかな、なんと初々しい(あったかいんだからぁ)、とか思ってしまうかもしれませんが、とんでもありません。そもそも「天使」とか「エンジェル」という言葉からは何かかわいらしいものを連想しがち(「天使すぎる」という、変な言葉もありますし)ですが、ここに登場する、いや、正確には単なる妄想で実体のないものが人間に憑依したとされるのは、屈強な男子なのですからね。
ですから、何も知らないでこのジャケットだけを頼りに見た人はびっくりするかもしれませんね。それを牽制するためでしょう、日本語の「帯」には「全体に裸体が多く出現します」という、なんとも無機質なコメントが見られます。仙台七夕ではありません(それは「屋台」)。
演出家のデヴィッド・フリーマンは、とことんその「裸体」にこだわりました。まずは、原作では主人公レナータの妄想とされているものが、数多くの白塗りの裸体として登場します。ま、それは「全裸」ではなく、適宜白いTバックで覆っている男子ですから、単に気持ち悪いだけですが、最後のクライマックス、修道女たちが次々と錯乱して、ついには「全裸」になっていくシーンは扇情的ですよ。もちろん、映像ではぼかしなんかは入っていませんから。
と、単にいやらしい眼で見ていただけだとしても、最後の火あぶりのシーンには思わずハッとさせられるはずです。そこでは、確実に何かが成就された様を見ることが出来ることでしょう。そこまで、ほとんど一人で歌い続けていたゴルチャコーヴァの熱演に拍手です。そして、この究極のエロティシズムをオーケストラから引き出したゲルギエフの逞しさにも。

DVD Artwork © Arthaus Music GmbH
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by jurassic_oyaji | 2015-07-10 19:43 | オペラ | Comments(0)