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SIBELIUS/Lemminkäinen Legends, Pohjola's Daughter
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Hannu Lintu/
Finnish Radio Symphony Orchestra
ONDINE/ODE 1262-5(hybrid SACD)




2013年にサカリ・オラモのあとを継いでフィンランド放送交響楽団の首席指揮者に就任したハンヌ・リントゥは、このフィンランドのレーベルからはリゲティ、べリオ、メシアンといった、いわば中央ヨーロッパの「現代音楽作曲家」のアルバムを作ってきました。それぞれに今までになかったような新鮮な味わいを体験させてくれたリントゥは、満を持して、というか、記念年にちなんでというか、やっと自国の作曲家、シベリウスのアルバムを作ってくれました。しかし、そこは今までの流れを裏切らない、何とも渋~い選曲ですね。「レンミンカイネン」と「ポホヨラの娘」ですから。逆に「フィンランディア」なんかを持ってこられても、怒ってしまうでしょうけど
今までのアルバム同様、これはライブ録音ではなく録音のためのセッションで作られたものです。その会場は、彼らのホームグラウンドである、ヘルシンキに2011年にオープンしたばかりの「ミュージック・センター」というところです。ここは、ヘルシンキのもう一つのオーケストラ、ヘルシンキ・フィルのホームグラウンドでもあるばかりではなく、なんとシベリウス・アカデミーという音楽大学まで同居(一部ですが)しているという、まさにフィンランドの音楽文化の中心地です。オーケストラの録音やコンサートが行われるのは座席数1704のコンサートホールですが、その写真を見ると、あちこちに見慣れた部分があることが分かります。
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そう、これは世界中でコンサートホールの音響設計を手掛けてきている豊田泰久さんの手になるものです。日本のホールでは、ミューザ川崎のシンフォニーホールとそっくりですね。
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ただ、このミュージック・センターの場合は、全体がガラス窓で覆われていて、本番の時こそはカーテンで覆われたりしますが、リハーサルの模様などは自由に外から見学できるようになっているのだそうです。そういう発想のホールは、おそらく日本にはまだないのかもしれませんね。
シベリウスが北欧叙事詩「カレヴァラ」をモティーフにして1896年に発表した、4つの部分からなる「レンミンカイネン」は、その時点ではここで演奏されているものとはかなり姿が異なっていました。それから何度も改訂が加えられ(演奏曲順も変わります)、最終的に現在の形になったのは、1954年にブライトコプフから出版された時でした。最後の「レンミンカイネンの帰郷」などでは、長さがほぼ半分になっているそうです。
最近さる音楽雑誌で見たのですが、このオーケストラの弦楽器奏者は、全てフィンランド人で占められているのだそうですね。それこそ、「シベリスス・アカデミー」の出身者などが中心になっていて、奏法なども近いものがあるのでしょう。SACDではほかの楽器があまりに立っているので時として弦楽器がうずもれて聴こえることもあるのですが、ここではそんなことは全くなく、強靭な主張がストレートに伝わってきます。実は、外国人の中で最も多いのが4人の日本人(フルート、トランペット、打楽器×2)なのだそうです。フルートの小山さんは、この録音に参加していたのかどうかは分かりませんが、時折聴こえてくるソロは、音色も渋く、あくまでオーケストラ全体の中の1楽器というスタンスのように感じられます。このオーケストラの弦楽器のパワーに圧倒されていたのか、他の人が吹いていたのでしょう。
リントゥの指揮は、シベリウスの巧みな自然描写を前面に出して、物語に推進力を与える、といったようなものだったのかもしれません。卓越した録音によって、それは的確に聴き手の耳に届くはずです。
もう1曲の「ポホヨラの娘」の日本語表記は、このSACDの帯でもそうですが、いまだに「ポヒョラの娘」というカレイの仲間(それはオヒョウ)みたいな言い方が横行しているのは残念です。「ポッヒョラの娘」と促音が入ればまだ許せますが。

SACD Artwork © Ondine Oy
by jurassic_oyaji | 2015-07-27 20:56 | オーケストラ | Comments(0)