おやぢの部屋2
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Jewels of Ave Maria
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田村麻子(Sop)
福本茉莉(Org)
NAXOS/NYCC-27290




「アヴェ・マリア」というタイトルの曲ばっかりを集めた、ユニークなCDです。そして、編成が、ソプラノ・ソロとオルガンという、とてもユニークなものです。歌っているのはニューヨーク在住、世界中のオペラハウスで活躍されている田村さん、そこに、やはり世界中でご活躍、このレーベルからもソロアルバムをリリースしている福本さんのオルガンが加わります。
これは、今まで誰も聴いたことがなかったようなレアな「アヴェ・マリア」が含まれている、というとても意義深いアルバムではあるのですが、第一義的にはオーディオ的な側面を押し出したものであることは、ブックレットに高名なオーディオ評論家、麻倉怜士氏のエッセイが掲載されていることでも分かります。そこでは、録音フォーマットが5.6MHzのDSDであると述べられています(これは、本来なら録音クレジットで掲載されるべきデータなのでしょうが、そこにはフォーマットはおろか、こういうものを目指しているCDであれば必須のマイクロフォンなどの録音機材に関する記載は全くありません)。これは、SACDで採用されている規格の倍のサンプリング周波数ですから、ほぼハイエンドのハイレゾ録音であることが分かります。
もちろん、それをきちんと味わうためには、このCDではなく、配信サイトで入手できるハイレゾ・データを聴かなければいけません。そのあたりの誘導の役割を果たすのも、この麻倉氏の文章なのでしょうが、その部分の書き方がかなりいい加減なのには、ちょっと「?」です。配信サイトでは、オリジナルの5.6MHzのDSDと、24bit/192kHzのPCMのデータが入手できるのに、「DSD2.8MHzファイル」などと書いてありますし、もっと分からないのが「CD用の48kHz/24bitのPCM」という、オーディオ評論家とは思えないような荒っぽい言い方です。
とりあえず、参考のために24/192のデータを1曲分だけ(ビゼー)購入して、このCDの同じトラックと比較してみましたが、その差は歴然としています。ここではアルバムの趣旨に従ったのでしょう、ホールに備え付けの大オルガンを、あえてストップを少なくしてまるでポジティーフ・オルガンのようなコンパクトな音色で聴かせようとしています。そのあたりの繊細さがCDでは全く伝わってこないのですね。ソプラノ・ソロも、高音がCDでは何とも押しつけがましく聴こえてきます。ハイレゾ・データではそのあたりがソリストの個性としてとても美しく感じられたものを。とは言っても、CDで最後のトラックのピアソラを聴くと、そのエンディングでソプラノのビブラートとオルガンとが共振して、なんともおぞましい響き(はっきり言って録音ミス)が聴こえてきます。そんなところまではいくらハイレゾでも世話を見切れないのかもしれませんね。
そのピアソラをはじめとして、まだ世の中にはこんなに美しい「アヴェ・マリア」があったのだ、と気づかされたのは、間違いなくこのアルバムの恩恵です。あの有名なオルガニスト、マリ=クレール・アランの兄である、やはりオルガニストで作曲家であったジャン・アランの作品などは、オルガンの響きとも見事にマッチしたモーダルなテイストがとても新鮮に感じられます。アルバムの冒頭を飾るミハウ・ロレンツという人の作品も、初めて聴きましたがとても美しいものでした。ただ、この人のファーストネームの欧文表記は、「Michal」ではなく「Michał」となるのでしょうね。
そんなレアなものではなく、世の中には「4大アヴェ・マリア」などというものがあることも、さっきの麻倉氏の文章から知ることも出来ました。でも、バッハ/グノー、シューベルトは分かりますが、残りのカッチーニとマスカーニというのは、どうなのでしょう。「カッチーニ」がジュリオ・カッチーニの作品でないことは周知の事実ですし、「マスカーニ」は言ってみれば「替え歌」ですからね。

CD Artwork © Naxos Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2015-07-29 21:08 | 歌曲 | Comments(0)