おやぢの部屋2
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GRIEG, EVJU/Piano Concertos
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Cars Petersson(Pf)
Kerry Stratton/
Prague Radio Symphony Orchestra
GRAND PIANO/GP689




このレーベルのジャケットは、なんだか意味不明のものが多いような気がしますが、これは全くの例外、このアルバムの作曲家の似顔絵という、意表をつくものでした。手前の髭の人は誰でも知っているノルウェーの大作曲家エドヴァルト・グリーグ、その後ろは、おそらく誰も知らないヘルゲ・エヴユという、やはりノルウェーの作曲家です。グリーグは1843年生まれですが、このエヴユさんはそのほぼ100年後、1942年に生まれています。
実は、このアルバムでは、もう一人の作曲家が登場しています。それは、1882年にオーストラリアに生まれたピアニスト/作曲家のパーシー・グレインジャーです。グレインジャーとグリーグとは1906年にロンドンで会った時からすっかり「いい友達」になり、グリーグの指揮、グレインジャーのピアノで、グリーグのピアノ協奏曲を引っさげてコンサート・ツアーを行う計画を立てたのだそうです。しかし、翌年にはグリーグは没してしまい、それは実現されませんでした。ただ、そこで残されたのが、グレインジャーが校訂を行ったピアノ協奏曲の楽譜です。そこには、若いころに作った出世作であるこの作品に、晩年のグリーグがその時点での思いを込めたものになっていたと言われています。
日本語の「帯」には、「オーケストレーションやリズム処理など、至る所に斬新さが感じ取れる」とあったので、スコアを見ながら聴いてみたのですが、特段そのようなところはありませんでした。もしかしたら、見逃したのかもしれませんが、全体的な印象でも特に「斬新」とは思えませんでしたし。ただ、演奏自体は非常にキビキビした、余分な情感を廃したようなものだったので、そのような指示が楽譜に加えられていたのかもしれません。確かに、カデンツァなどでは、演奏家に任せてちょっとだれてしまうようなところがきっちりとしたリズムで書き直されているのでは、と思われるようなところがあったような気はします。
それだけではない、2つ目のサプライズが、このアルバムには込められています。お待たせしました。やっとさっきのエヴユさんの登場です。グリーグは、生前に2つ目のピアノ協奏曲の構想を練っていたそうで、そのためのスケッチの断片や、大まかな楽章構成などを書いたものが残されています。それに関しては、こちらをご覧ください。そこで取り上げた、1996年にリリースされたCDでは、最後のトラックにこの「断片」が収録されていました。それと全く同じものが、今回のCDにも収められていますが、エヴユさんは、この断片を元に、きちんとしたフルサイズのピアノ協奏曲を作ってしまったのだそうです。その「ヘルゲ・エヴユ作曲:グリーグの断片によるピアノ協奏曲ロ短調」という作品は、ですから幻の「グリーグ作曲:ピアノ協奏曲第2番ロ短調」を、グリーグが残したわずかな断片から、その全体像を修復したものなのかもしれません。なんだか興奮しますね。
しかし、実際に聴いてみると、これはやはり「グリーグ作曲」と明示しなかったのがまさに正解だった、と言わざるを得ないようながっかりさせられるものでした。この曲は全部で5つの楽章で出来ていて、モデラート・トランクィロ-スケルツォ-アダージョと来た後にカデンツァが第4楽章とされ、そのあとにフィナーレが置かれるという構成です。しかし、さっきのグリーグ自身のスケッチは、このカデンツァのなかにそのまんまの形で「断片的」に出てくるだけで、他の部分でそのテーマが展開されているという形跡は見られません。かろうじて、カデンツァの最後を飾る3番目の断片のタランテラ風のリズムがフィナーレに受け継がれている、というだけのようですね。それだけでは、ちょっと足らんてら
ですから、これは「グリーグ」という名前を外しさえすれば、なんかとても盛り上がる作品として愛されることもあるのではないでしょうか。エンディングなどはチャイコフスキーそっくりですし。
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by jurassic_oyaji | 2015-08-02 20:11 | ピアノ | Comments(0)