おやぢの部屋2
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Spes
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Frode Fjellheim(Vo, Kbd)
Snorre Bjerck(Perc)
Tove Ramlo-Ystad/
Cantus
2L/2L-110-SABD(hybrid SACD, BD-A)




2013年11月にアメリカで公開されたディズニーのCGアニメ「Frozen」は、そのテーマソングの「Let
It Go」とともに大ヒット、翌年3月には日本でも公開され、やはりテーマソングの日本語版「ありのままで」も、異常とも言えるヒットとなったのでした。その時には、映画の邦題は「アナと雪の女王」というダサいものに変わっていましたね。
このアニメは、ほかのディズニー作品と同様、まるでミュージカルのようにセリフ以外にも歌によってストーリーを進行させるという手法が取られています。その歌のパートを制作したのはクリステン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスのチームですが、それ以外のサウンドトラックのスコアはクリストフ・ベックが作っていました。ちょっと変わったやり方ですが、映画のオープニング、本編が始まる前の制作者のタイトルクレジットの部分で、すでに彼の仕事は始まっています。そこで流れてきた民族的なテイスト満載のア・カペラの女声合唱には、思わず耳をそばだてずにはいられない魅力が込められていたはずです。それを聴いた人は、ディズニーが本気で、このアニメの舞台である北極圏の伝承音楽を使おうとしていたことに気づいたはずです。この音楽はエンディング近くの、みんなが氷の世界から解放されるというシーンでも、印象的に登場してくれます。
これは「ヴェリイ(Vuelie)=歌」というタイトルが付けられた曲ですが、元々はノルウェーの作曲家フローデ・フェルハイムが2002年に出版した「Eatnemen Vuelie/大地の歌」という合唱曲でした。彼の音楽的なルーツは、このアニメの舞台となったサーミ地方に伝わる「ヨイク」、この曲にもヨイクのエッセンスが込められています。真似をしたらだめですよ(それは「ヨイコ」)。そして、このアニメのために、クリストフ・ベックとともに手直しを施して出来上がったのが「ヴェリイ」、それをサウンドトラックで歌っていたのが、フェルハイムとは長年コラボレーションを行ってきているノルウェーの女声合唱団「カントゥス」です。「Let It Go」ほどの派手さはありませんが、この1曲によって、一介のローカルな合唱団にすぎなかった「カントゥス」も世界的な人気を獲得することになったのです。
北欧の様々な素晴らしい合唱団を紹介してくれている2Lレーベルが、この合唱団に目を付けない訳がありません。1986年に創設された時から、トーヴェ・ラムロ=ユースタによってしっかりと育てられてきた「カントゥス」は、別にそのような騒ぎがなくても十分に世界中のマーケットで通用するだけのクオリティを持っていた合唱団だったのです。ですから、このアルバムではフェルハイムの作品をメインに据えてはいるものの、その「ヴェリィ」はほとんどボーナス・トラックほどの扱いで最後に収録されているだけです。それを、日本の代理店のコピーは「『アナ雪』のオープニング曲『ヴェリィ』を収録!」ですからね。まあ、同じレーベルの中でも制作担当と広報担当ではかなりの温度差があるものですから、こんなのは大したことではありません。
そのフェルハイムの作品には、彼自身がキーボードで参加するだけではなく、ちょっとこの合唱団とは違和感のあるだみ声でのソロまで担当しています。最初のトラックの「Aejiles(Sanctus)」では、澄み切った女声合唱の中にいきなりこの「変な声」が入ってきて驚かされますが、それは決して不快な体験ではありません。ヨイクっぽい歌だからこそ伝えられる確かなメッセージを、まわりの女声が温かく包み込むという構図、そして、メロディ・ラインなどはあくまで平穏で親しみやすいものですから、それが頭の中で反芻されるようになるのはたやすいことです。
それ以外の曲では、もちろん合唱だけで、時には民族唱法も交えての、アルバム・タイトルの「希望」など、現代の合唱界でのレパートリーが披露されます。そこに松下耕の「Alleluia, Cantate Domino」までもが取り上げられているのは驚きです。もちろん、録音はいつもながらの完璧さです。

SACD & BD-A Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2015-08-06 20:57 | 合唱 | Comments(0)